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元軍医が記録した被爆手記 世界に届け と有志が英語版

■記者 金崎由美

 東京都の旧田無市(現・西東京市)元市長、故指田吾一さん(1969年に59歳で死去)が生前に出版した手記「原爆の記」が、地元住民らの手で英語版になった。ウェブ上でも読めるため「被爆体験を世界に広げられる」と期待している。

 軍医として広島に赴任していた指田さんが、被爆しながら医療活動をした記録。藤川利子さん(70)=西東京市=が絶版となっていた原書を読んで感銘を受け、昨夏に復刻した。この手記を英訳したのが元英語講師の河東あやさん(84)=同市。知り合いの藤川さんを通して読んだ。

 焦土と化した市街、水を求めて力尽きた死体の山…。想像を絶する体験は「原爆を落とした米国でこそ読まれるべきだと思った」。自ら英訳を申し出た。

 2カ月の試行錯誤を重ねて仕上げた英文は、校閲を依頼した縁で、国際基督教大社会科学研究所が出版するシリーズの1冊として収録された。

 「指田さんの平和への思いは世界の人々の心に響くはず」と藤川さん。今月6日を挟む5日間は、英語講師らを招き市民向け勉強会も開いた。被爆体験を伝えることが「生き残った人の義務」と書いた指田さんの遺志を着実に実現させている。

 英語版1260円、日本語版500円。藤川さんTel042(461)0188。英語版は同大ホームページhttp://subsite.icu.ac.jp/ssri/

(2008年8月17日朝刊掲載)

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