×

社説・コラム

社説 野党の選挙協力 「対立軸」打ち出せるか

 民主、共産、維新、社民、生活の野党5党が夏の参院選で選挙協力する方針で一致した。安全保障関連法に反対する候補者をそろって支援し、分散していた野党票を結集して自民1強に対抗したい考えだ。

 共産党の動きが後押ししたのは間違いない。きのうの全国会議で志位和夫委員長は改選される「1人区」での擁立を見送る考えをあらためて示し、他党の候補者が安保法廃止を公約とすることを条件に挙げた。さらに衆院選の協力まで示唆したのは取り沙汰される衆参ダブル選への警戒からだろう。

 候補者相乗りは国や地方の選挙では珍しくはない。しかし独自路線を取る共産にすれば思い切った判断に違いない。昨年来、掲げる「国民連合政府」構想について「まず横に置いて」との微妙な言い回しながら事実上、棚上げしたためだ。

 参院選の全国32の1人区のうち共産は29選挙区で候補予定者を決め、うち21選挙区は民主と競合していた。仮に2013年の参院選の得票に照らせば、自民党の候補が敗北する選挙区もあると考えられる。

 この土日の共同通信の世論調査では内閣支持率は7ポイント減の46・7%となった。閣僚や議員の放言などが響いたとみていい。野党にとっては追い風の状況といえる。政権批判の受け皿の一本化が戦略である以上、まず試されるのが4月にある二つの衆院補選への対応だろう。

 北海道5区では共産が候補予定者を取り下げ、民主系の無所属新人を支援することを決めた。さらに女性問題による前職辞任に伴う京都3区でも、同じ枠組みで戦う可能性が高い。結果次第では安倍政権には大きなダメージとなり、今後の国会運営や解散戦略にも影響が出る可能性も考えられる。

 ただ共闘は不安要素を抱えているのも確かだ。

 昨年9月の安保法成立から5カ月もの間、野党共闘の声があっても進まなかった背景には、政策や主義・主張が異なる共産への違和感があったのは間違いないところだ。とりわけ野党第1党の民主では政策のすり合わせではなく、選挙協力にとどめるべきだとの声が根強かった。党内の保守派には選挙で手を組むこと自体を嫌う向きもある。このまま順調に協力が前に進むとは限るまい。

 野党5党としては国会に提出した安保法廃止法案を選挙協力の象徴としたいのだろう。各党の主張に沿っており、一致点は見いだせよう。ただ法施行は3月末に迫る。今なお憲法違反が指摘される法律とはいえ、現実的には与党が審議に応じない公算は大きい。国会論戦でどこまで世論にアピールできるか。

 有権者にしても安保法反対という一点だけでは1票を投じる判断が難しいはずだ。

 経済や外交をめぐる各党の隔たりは小さくない。本来なら野党再編で「対立軸」を明確につくる方がすっきりする。だが焦点となっていた民主と維新の党との合流構想にしても一向に前に進まず、今回の世論調査でも65%が「一つの党になる必要はない」と答える始末だ。

 一連の野党側の動きを政府与党は「野合」と批判する。目先の協力にとどまらず選挙後の共闘の在り方や目指す政治の方向性を示さねばならない。

(2016年2月23日朝刊掲載)

年別アーカイブ