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硫黄島戦死者の水筒 寄贈 福山の遺族が意向 市人権平和資料館に

 第2次世界大戦中に硫黄島で戦死した福山市柳津町出身の日本兵が、亡くなる直前まで使ったとみられる水筒を、遺族が近く同市人権平和資料館(丸之内)に寄贈する。同館は「戦死した地元の兵士を知る貴重な資料」とし、企画展などでの展示を検討する。

 日本兵は、陸軍独立混成第17連隊に所属し、1945年3月17日に28歳で同島で亡くなった佐藤長一さん。水筒は金属製で幅約16センチ、高さ約22センチ。布製ベルトが付いている。

 遺族たちによると、島に上陸した米兵が拾って米国に持ち帰った。82年に日系人を介して受け取った岐阜放送(岐阜市)の記者が持ち主を調査。表面に刻まれた「杉原隊 佐藤」という名前や筆跡から、佐藤さんの持ち物とみられることが分かり、同年7月、遺族の元に戻った。

 佐藤さんの死後、遺族には、「遺骨」として、名前を記した木片のようなものが届いただけだった。そのため、水筒は遺品として実家で保管されてきた。ただ、死後70年がたち、遺族が「多くの市民に見てほしい」と寄贈を決めた。

 佐藤さんは8人きょうだいだった。妹で、ただ一人存命の田内チヨミさん(94)=福山市藤江町=は「優しかった兄を思い出すと今も涙が出る。戦争なんて繰り返してほしくない」と願う。(小林可奈)

(2016年2月23日朝刊掲載)

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