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社説・コラム

天風録 「今度は風の力」

 猛烈な風が吹き抜けて春の訪れを告げたのは、もう10日も前のこと。その後は足踏みしているらしい。時折かすかな春のにおいを運んでくる風もあるがまだ冷たくて身が縮む。桜を咲かせる「春二番」が待ち遠しい▲こちらの風向きは確実に変わりつつあるようだ。風力による発電能力が、原子力を上回ったという。コスト低下に加え、安定性もアップして流れが加速した。昨年、新たに造られた風力発電は、原発60基分に相当する▲とはいえ電気を起こす能力の話である。どれだけ発電できるかは、風の流れにかかっている。実際の発電量ではまだ原発が勝っているだろう。だとしても世界の潮流が、安心安全の再生可能エネルギーに向かっているのなら喜ばしい▲原発事故で地域が変わり果てた福島県の浜通り地方に、風力による発電施設が構想されている。沖合では洋上風車の実験も進む。県は2年後に再生エネ30%を目指している。被災者に寄り添って風が集まることを願う▲風の吹く適地が多い日本だが、発電力や新設は世界で20位前後に甘んじる。地球の未来を拓(ひら)く話でもある。「環境の日」を間違えた大臣の姿勢も問われよう。風に乗り遅れ、風任せでは困る。

(2016年2月24日朝刊掲載)

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