×

連載・特集

70年目の憲法 第2部 私の主張 <3> 公明党憲法調査会長代理・斉藤鉄夫氏

新たな価値観「加憲」を

  ―安倍晋三首相は憲法改正を参院選の争点にし、改憲勢力で国会発議に必要な3分の2の議席確保を目指す、と表明しています。
 争点化には反対だ。憲法には、国会の憲法審査会での議論の積み重ねがある。参院選で勝ち改憲に向けたスピードを速めようと争点にするなら、それは違う。仮に国民投票する場合は野党第1党も含め、ほとんどの政党が合意できる形で進めるべきだ。

 改憲スケジュールを示し、いつまでに3分の2を取って進めるという方法は、結果として憲法改正を遠ざける。皆が納得し国民に諮る―。そうでないと、国民投票での過半数は難しい。

9条1・2項守る

  ―憲法改正に対し、公明党はどう考えますか。
 現行憲法を高く評価している。ただ不磨の大典ではなく、新たな価値観を加えていくことはあっていい。つまり加憲。例えば環境権だ。世界で新しい憲法が作られる場合、必ず良好な環境の中で生きる権利が入る。また、プライバシー権は基本的人権の一つとして加えてもいい。そして緊急事態条項。今の憲法では不備もある。ただこれは国民の権利の制限も絡む。非常に慎重な議論が必要だ。

  ―安倍首相は9条改正にも踏み込んでいます。
 私たちは9条を重く捉えている。それはヒロシマの精神として守る必要もある。戦争放棄、戦力の不保持をうたう9条1、2項は変える必要はない。特に安全保障関連法が成立し、9条が許す自衛の措置の範囲が明確になり、改正は必要なくなった。ただ公明党内では1、2項を達成するための実力組織として自衛隊を置くとの3項があってもいいとの意見もある。それも加憲だ。1、2項改正を目指す「3分の2」なら公明党は外れる。首相もそこは理解しているはずだ。

国民分断は駄目

  ―緊急事態条項など各党が賛同しやすい項目から改憲を目指す自民党の方針について、野党側は「お試し改憲」と批判しています。
 お試し改憲でいいではないか。やってみて9条を改正しやすくなることはない。国民はばかじゃない。

  ―憲法改正議論の進め方をどう考えますか。
 国民投票法もでき、いつでも国会で発議できる。野党第1党も賛成できる形にしないと絶対に駄目。国民分断の国民投票になる。民意が真っ二つに分かれてはならない。憲法は70年変わっていない。今のスピード感でいけばいい。(聞き手は胡子洋)

さいとう・てつお
 1952年、島根県邑南町生まれ。東京工業大大学院修了。93年、旧広島1区から衆院議員に初当選し、環境相などを歴任。当選8回。比例中国。衆院憲法審査会委員など。64歳。

加憲
 時代の進展に伴い、憲法に新たな理念や条文を加え補強する公明党の基本スタンス。各党合意が得やすい環境権の検討が進む。良好な自然環境を享受する権利で、高度成長期に公害などの被害救済運動を進めた弁護士らが提唱。民主党も必要性を認める。

(2016年2月25日朝刊掲載)

年別アーカイブ