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社説・コラム

社説 民主・維新合流 政策擦り合わせを急げ

 昨年夏から難航してきた民主党と維新の党の合流協議がまとまり、きょうにも党首会談で正式合意の運びだ。3月中の新党結成を目指すという。

 安全保障法制に象徴されるように安倍政権が幅広い民意をくみ取っているとは言い難い。共産、社民、生活を加えた野党5党が選挙協力を打ち出したことが民主と維新の膠着(こうちゃく)状態を解いたのだろう。現有勢力を足せば衆参150議員を超える。

 政権に対する批判の受け皿となる野党の核として、夏の参院選に挑むことになれば、その意味は小さくない。とはいえ、現時点で新党結成がどれほど世間の関心事となっているだろう。1990年代の新党ブームのような盛り上がりは感じられないし、二大政党の一翼を担うほどの存在感はまだない。

 共同通信の世論調査が物語っていよう。「政治とカネ」の問題や閣僚の失言が相次ぐ自民党の支持率は目減りする半面、上振れを見込んだはずの民主や維新の支持拡大には結び付かなかった。両党合流を求める声にしても2割にとどまった。

 この冷ややかな世論を十分に踏まえ、両党の議員は自らの足元を見つめ直すべきだ。

 合流方式からして有権者からは分かりにくい。民主の議員の大半がいったん離党し、解党する維新の議員とともに名称変更する新党に加わる方向で検討しているという。民主解党を求める維新側に配慮した折衷案で、民主党にすれば政党交付金のことも考えた。

 今後1カ月、新党協議会で議論するというが、最大の懸案が党名のようだ。「民主」の名を残すかどうかも意見が分かれている。いっそ世論調査で決めたらという声もあるが公党として無責任のそしりを免れまい。仮に変えるなら、せめて胸を張ってアピールできるような名前にしてもらいたい。

 こうした動きに共通するのは内向きな姿勢である。何より有権者の視点に立つべきだ。とりわけ次の参院選から有権者となる10代の若者にどう映るかを肝に銘じるべきだろう。

 いま求められているのは単なる看板の架け替えではなく、新党がどんな政治を目指すかという具体的なビジョンだ。しかし選挙対策に専ら目が向き、政策理念の擦り合わせが後回しになってきた感は否めない。与党が早速「野合」だと批判するのも、まさにこの点であろう。

 ただ政策面はまだはっきりしていない。確かに安保法廃止に関しては足並みがそろうが、安全保障政策全体や環太平洋連携協定(TPP)などでは、民主内部でさえ隔たりを抱える。維新が強く唱えてきた国家公務員の人件費削減にしても今後、不協和音が出かねない。

 安倍晋三首相は参院選において憲法改正を争点にしたい考えである。それに対して新党がどのように向き合っていくかも定まっていない。

 新党の理念や政策をあいまいにすれば支持拡大は限りがあろう。もともと寄り合い所帯の民主党が政策の詰めを怠ったまま政権交代を果たし、内部崩壊した教訓を忘れてはならない。

 むろん野党の奮起を願う国民は少なくないはずだ。その期待に応えるためには、遅くても新党結成までにさまざまな答えを出していく必要がある。

(2016年2月26日朝刊掲載)

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