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平時の日米一体化加速 安保法 来月末に施行

 集団的自衛権の行使を認め戦後日本の安全保障政策を転換する安保関連法施行まで1カ月となった。政府は3月29日施行で調整。平時からの自衛隊・米軍の運用一体化への準備を加速させる。安倍政権は世論の反発再燃を警戒し、自衛隊員が海外で武器を使い国連要員らを救出する「駆け付け警護」など安保法に基づく新任務は夏の参院選後に先送りする方針。これに対し民主、共産など野党5党は安保法廃止法案を国会提出し、参院選で争点化する構えだ。

 日米両政府は安保法施行後に備え、自衛隊と米軍による運用面での連携を強化させる。その象徴が新たな日米防衛協力指針(ガイドライン)に基づき昨年11月に発足させた「同盟調整メカニズム(ACM)」だ。

 平時から自衛隊と米軍を一体運用するための仕組みで、今年1月下旬からACMを使った初の日米共同統合指揮所演習を防衛省や、米軍横田基地(東京都福生市など)で実施。演習期間に、北朝鮮によるミサイル発射の可能性が高まり、日米がACMを駆使して対応に当たった。

 北朝鮮ミサイルへの共同対処は、安保法を整備した主要な目的の一つ。安倍晋三首相は2月16日のハリス米太平洋軍司令官との会談で「強化された日米同盟が円滑に効果を挙げた」と評価。中谷元・防衛相は27日のテレビ東京番組で、安保法や新指針に触れ「より日米が協力することで日本の平和と安全を維持する」と訴えた。

 他方、自衛隊に新任務を適用するための準備は参院選への悪影響を考慮し進んでいない。防衛省は、駆け付け警護など新任務に対応した武器使用基準の見直し作業を継続。必要な訓練は基準見直しを踏まえて実施する予定だ。

 民主、共産、維新、社民、生活の野党5党は19日、集団的自衛権を認める安保法を「憲法違反」と指摘し、廃止する法案を衆院に共同提出。民主、維新は武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」に対処する領域警備法案などの対案も提出。与党はこれらの法案の審議入りには応じない構えだが、野党側は参院選に向けて批判のトーンを強める方針だ。

日米防衛協力指針(ガイドライン)
 自衛隊と米軍の協力や役割を定めた政府間文書。冷戦時代の1978年に旧ソ連の侵攻に備えて策定した。97年に朝鮮半島有事を重視した内容に改定。安倍政権は指針再改定を安全保障関連法と表裏一体と位置付け、2015年4月に中国の軍拡や北朝鮮情勢を踏まえて再び改定した。日米両政府は同年11月、新指針に基づき、平時から自衛隊と米軍の運用を調整する「同盟調整メカニズム」を発足。日米防衛当局が情報共有し、対応に当たっている。

(2016年2月28日朝刊掲載)

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