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老舗喫茶元店主 力添え 原爆ドーム東隣「おりづるタワー」 地縁生かしオフィス誘致 

 広島市中区の原爆ドーム東隣に今秋完成する「おりづるタワー」。事業を進める広島マツダ(中区)のスタッフの一人、中川公一郎さん(56)は、改修前のビル1階にあり、旧市民球場時代、広島東洋カープの選手やファンに親しまれた老舗喫茶「マリーナ」の店主である。この地で長年培ったつながりを見込まれ、畑違いの業務に奮闘している。(増田泉子)

 おりづるタワーは地上14階地下2階。12、13階を展望スペースとして平和記念公園を訪れる人たちに開放し、1階には特産品販売や飲食の店舗を設ける。中川さんは、3~11階の貸しオフィスの誘致に携わる。

 マリーナは、前身のビルができた1978年に、中川さんの母満子さん(85)が開いた。球場の真ん前にあり、カープの古葉竹識元監督が試合前に白星を求めて験担ぎに食べていた「たまごカレー」が名物。選手のサインや写真が飾られ、ファンにも愛されていた。ホテル勤めをしていた中川さんは91年に継いだ。

 2009年にマツダスタジアム(南区)が誕生し、カープは移転。中川さんはなじみの新聞記者に弁当の配達を続けた。しかし売り上げは半分以下に減り、12年春に店を閉じた。

 そんな中川さんに、10年にビルを買い取った広島マツダの松田哲也会長(47)が「事業に関わってほしい」と声を掛けた。「思い入れのある土地だからうれしかった。年を食ってる分、地域や人との接し方でお役に立とうと必死です」。建築、設計、不動産といった分野に、勉強しながら取り組んでいる。

 松田会長はビルの完成後、中川さんにカフェを任せたいと描く。が、中川さんは「晴れがましい場に、枯れかかった人間はふさわしくない」と言いながら、企業回りに精を出している。

(2016年2月29日朝刊掲載)

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