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社説・コラム

Let’s広響 海外気鋭と復興祈る調べ 11日定演 被爆地から熱くエール

 広島交響楽団の本年度公演を締めくくる第358回定期演奏会は、東日本大震災からちょうど5年となる11日に開かれる。ラトビア出身の指揮者アンドリス・ポーガと、フランス出身のピアニスト、ミシェル・ダルベルトを迎え、被災地の復興へ向けた祈りのステージを繰り広げる。

 ベートーベンのピアノ協奏曲第4番で幕開け。ソリストのダルベルトは震災のあった2011年、海外アーティストの来日自粛が相次ぐ中、招待されていた日本の音楽祭に迷いなく参加した。アンコールでベートーベンのピアノ・ソナタ第12番「葬送」を奏で、震災の犠牲者にささげた。

 スイスで開かれるクララ・ハスキルと、リーズ(英国)の二つの国際ピアノコンクールで優勝し、世界の名だたる指揮者や楽団と協演を重ねるダルベルト。今回の第4番について「ベートーベンの最も素晴らしい作品の一つ」と評する。

 地震、津波、原発事故という未曽有の災害から5年後の公演に「深い悲しみと怒りが残る中、2万人近い犠牲者を思いつつ、今なら人類の希望と確信とともにこの曲に耳を傾けることができる」とメッセージを寄せる。仏ピアノ界の巨匠が被災地を思って奏でる音色に耳を澄ませたい。

 後半は、ラトビア国立交響楽団音楽監督に13年から就任したポーガが得意とするロシア音楽が並ぶ。広響の創立50周年記念定演で世界的チェリスト、ミッシャ・マイスキーと協演し、感動を届けた気鋭の指揮者のタクトに期待が高まる。

 まずは古典と斬新さが融合したプロコフィエフの交響曲第1番「古典交響曲」。続いてストラビンスキーのバレエ「火の鳥」組曲(1919年版)を演奏する。被爆70年で「平和と希望への祈り」をテーマに掲げてきた本年度のラストを飾る曲。被爆地のオーケストラが、復興に向かう被災地に力強いエールを届ける。(余村泰樹)

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 開演は午後6時45分、広島市中区の広島文化学園HBGホール。5200~4200円(学生1500円)。広島交響楽協会と中国新聞社の主催。広響事務局Tel082(532)3080。

(2016年3月3日朝刊掲載)

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