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津波 それでも海への愛 3・11後 千葉から岡山に移住の沢さん 記録映画で演奏

 東日本大震災を機に岡山市北区へ移住した歌手、沢知恵さん(45)が震災後の東北を記録したドキュメンタリー映画「家族の軌跡~3・11の記憶から」のエンディング音楽を担当した。東北での演奏活動で感じた被災者の海への愛情をピアノ演奏に込めた。震災から5年を前に、同区で6日あった上映会で思いを語った。

 写真家大西暢夫さん(47)=岐阜県池田町=が宮城県東松島市の仮設住宅などで暮らす住民たちの歳月に迫った作品。全国各地で2月、自主上映が始まった。沢さんが選んだのは、唱歌「浜辺の歌」。打ち寄せる波が背景のラストシーンで優しく、時に力強い音色が響く。約100人が集まった上映会で、沢さんは「東北で見た景色や人の姿を思い浮かべた」と語った。

 沢さんは震災当時、千葉県松戸市にいた。福島第1原発事故で、局地的に放射線量が高いホットスポットが現れ、健康影響をめぐって「物言えぬ空気」が広がった。2014年春、子ども2人と岡山に移住。ハンセン病元患者が暮らす大島青松園(高松市)で演奏会を続けており、瀬戸内に愛着もあった。

 大西さんとは14年12月、岡山の写真展で意気投合し音楽を頼まれた。その時、宮城県山元町で出会った高齢男性が「浜辺の歌を聴きてえな」とつぶやいた記憶がよみがえった。〽あした浜辺を さまよえば 昔のことぞ しのばるる―。

 「大切な家族や仲間を奪った海を避ける人は多い。でも、みんな海を愛している」と東北への演奏活動を続ける沢さん。「遠い場所にいても、できることはある」と力を込めた。(石川昌義)

(2016年3月7日朝刊掲載)

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