×

ニュース

[忘れない 震災5年 しまね] 帰れぬ古里 荒れ果てた 福島から松江に避難 桑原さんが講演

 福島第1原発事故で大きな被害を受けた福島県双葉町の元町職員で、松江市山代町に避難している桑原達治さん(51)が9日、同市上乃木の松徳学院高で講演した。「自分の中では震災はまだ沈静化していない」。あれから5年。遠い古里に思いをはせながら、避難者の今を語った。(小林正明)

 父の転勤で小学校入学前から双葉町に住み、大学卒業後にUターンして町職員となった桑原さん。授業の一環として2年3組の30人を前に、今もほぼ全域が「帰還困難区域」となっている町や、両親が何度か一時帰宅して見た自宅の荒れ果てた様子を語り、「もぬけの殻」と嘆いた。

 あの日―。脳内出血で休職中で、リハビリの散歩から戻り、自宅玄関に入った瞬間、地震に襲われた。自宅は海岸から2・5キロ。「津波が来るはずだ」との父の判断で高台へ避難した。防災無線の呼び掛けで、その日のうちに内陸の川俣町へ移り、小学校の体育館で双葉町民と肩を寄せ合った。

 「みんな津波からの避難と思っていた」。配られた新聞で福島第1原発の事故を知る。「体育館が静まり返った。あの時の雰囲気は今も忘れられない」と振り返る。

 桑原さんは2011年5月、松江市へ。母の実家があり、父も津和野町出身で、島根県とは縁があった。「松江は過ごしやすい」と話す一方、「双葉町は原発と共存してきた。今となっては何とも言えない気持ちがある」。

 講演に聞き入った山田弥沙貴さん(16)は「いつ起こるかわからない震災で家を失うのは怖い。自分に何ができるか考え、備えたい」と話した。

 「古里に戻って生活できてこそ復興したといえる」。桑原さんはこう語って講演を結んだ。

(2016年3月10日朝刊掲載)

年別アーカイブ