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華麗なタカ像 猿猴橋に再び 28日記念の催し 住民ら「感無量」 広島市南区

 シンボルが再び舞い降りた―。90年前に建造され、「広島一の橋」とたたえられた華麗な姿への復元が進む広島市南区の猿猴橋に10日、青銅製のタカの像が設置された。市の被爆70年事業の一環。28日に、地元住民たちが完成記念の催し「えんこうさん」を開いて祝う。(渡辺裕明)

 午前11時。地球儀の上で羽ばたくタカの像が、クレーンで上空に持ち上げられる。「すごいね」「感無量だ」と関係者から感嘆の声がこぼれる。橋の両端4カ所にある花こう岩の親柱の上に据え付けられる瞬間を、多くの通行人が足を止めて見つめた。

 焦げ茶色の色彩が重厚感を醸し出す像は、台座を含め高さ1・5メートル。重さは約260キロに及ぶ。復元前と比べて親柱の高さは約2倍の5・28メートルになった。

 橋は1926年に猿猴川に架かり、長さ62・4メートル、幅8・5メートル。戦時中の43年、兵器製造のため青銅製の照明灯や像、欄干の透かし彫りなどは国に金属供出された。その後の被爆にも耐え、戦後の復興を見守ってきた。ただ、装飾は撤去されたままだった。

 地元住民は大正期の姿をよみがえらせようと、2008年に「猿猴橋復元の会」を結成。PR活動が実を結び、市を動かした。デザインは戦前の写真を参考に、市立大芸術学部の吉田幸弘教授が監修。市は15年8月に着工し、老朽化に伴う補修も含め約4億1千万円を投じた。像はワシとされてきたが、建造年発行の「道路の改良」(道路改良会)にあったタカの記載を尊重することになった。

 この日は、会のメンバー7人が作業を見守った。大橋啓一会長(69)は「復元が実現するまで、もっと時間がかかると思っていた。実物は迫力が違う。多くの人にじっくり見てほしい」と喜んだ。今後、市が舗装などを仕上げる。28日は像を除幕し、関係者たちで渡り初めをする。

(2016年3月11日朝刊掲載)

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