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30歳で1シーベルトを被爆 がん死亡 70歳時42%増 放影研調査

 放射線影響研究所(放影研、広島市南区)は1日、追跡調査をしている被爆者の死亡リスクを分析した結果を発表した。30歳の時に直接被爆し、1シーベルトの放射線を浴びた人が70歳になった時にがんで死亡するリスクは、被爆していない人に比べ42%高かった。1日付の米専門誌に掲載した。(金崎由美)

 放影研は1950年代から被爆していない人を含めた計12万人を対象に「寿命調査」という疫学調査を続け、放射線を浴びた人とそうでない人のがん死亡率などを比較した結果を定期的に発表している。

 個人線量が推定できる約8万7千人を解析の対象とした。50~2003年に死亡した被爆者は5万620人。このうち1万929人が胃や肝臓などの固形がんで亡くなった。

 30歳で被爆した人の70歳時の死亡率を被爆者と被爆していない人で比べると、被爆者の方が固形がんで亡くなる人が1万人当たり26人多かった。被爆時の年齢が20歳の場合、リスクは54%増加。部位別では胃、肝臓、肺、卵巣などにリスクの増加がみられたが、直腸、子宮、前立腺、腎臓は統計上の差が出なかった。

 がん以外では循環器、呼吸器、消化器の疾患で死亡リスクが高い傾向が出たが、放影研は「さらに調査が必要」としている。

 小笹晃太郎疫学部長は「今後は若年で被爆した人が高齢化するため、長期的な観察が必要」と話している。

(2012年3月2日朝刊掲載)

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