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助け合う心 難民に学ぶ 三次の西善寺住職ら タイのキャンプ訪問 

 三次市の浄土真宗本願寺派西善寺の小武正教住職(58)たちが、ミャンマー(旧ビルマ)から軍政に追われた人たちの暮らすタイのキャンプを毎年訪れ、現地の学校運営を物資や資金面で支えている。9回目のことしはつながりのある大学生も連れ、2月中旬に訪問。門信徒や市民から寄せられた支援金を届け、子どもたちと遊びや料理で交流した。助け合って暮らす難民の姿に触れる中で、仏教に根差した「ともに生きる心」の大切さをかみしめた。(桜井邦彦)

 小武住職が代表を務める「メラウーキャンプ教育支援の会」が訪ねたのは、ミャンマー国境に近いタイ北西部の「メラウー難民キャンプ」。民族などの単位で設けられた学校のうち「ヤウンニーウー学校」を支援する。同校は、民主化運動に携わった学生が自分たちの子の教育のため開設。12年制で、日本の小中高校生に相当する年齢の約480人が学んでいる。

 ことしは2月10~15日の日程で、国際支援にボランティアとして携わる大学生を含む8人が参加した。難民キャンプには2日間滞在し、学校内のバザーで巻きずしを作ったりドッジボールをしたりして交流した。

大学生も参加

 難民は、タイ軍が監視するキャンプから自由に出入りできない。食事は朝と晩の2食。非政府組織(NGO)などから届く米や豆が中心だ。学校給食はない。竹で骨組みをした簡素な学校で、子どもたちは朝から午後3時ごろまで勉強する。小武住職は「限られた食料を分け合い、規律を持って生きる姿にいつも引きつけられる。日本では薄れつつある心だ。支援に行ってこちらが学ばせてもらっている」と話す。

 立命館大1年の吉田悠生さん(19)=京都市北区=は、難民支援のサークルに入っている縁で初めて参加。「キャンプは閉ざされた社会。将来への夢や希望を持ちにくい。無邪気に遊ぶ子どもたちを見ていて、何もしてあげられない歯がゆさを感じた」と振り返る。

 ミャンマーは仏教が盛んな国で、支援の会は、最大都市ヤンゴンで僧侶たちによる反軍政デモがあった2007年、「ビルマの僧侶と連帯する仏教徒の会」として発足。広島市内で抗議集会を開いた。「偽僧侶」と軍政側が発砲し、死者が出る中でも信念を貫いた姿に、小武さんは「全ての人の幸せを願う僧侶本来の姿」と感動したという。

08年から毎年

 学校支援は、活動を通じて知り合った難民ココラットさん(45)=愛知県一宮市=の仲介で08年から続ける。毎年60万円の現金に加え、校舎の電力を賄う発電機やパソコンなども贈った。

 学校の年間運営費は約300万円。かつては、韓国の医師グループから年100万円が届いていたが、経済的理由で13年度になくなり、財政事情は厳しい。ココラットさんは「難民支援で最も大切なのは教育。子どもたちをきちんと育てていかないと国の未来はない」と、日本からの支援の必要性を訴える。

 政治的には昨年11月の総選挙でアウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝、民主化の流れが加速している。一方、キャンプ内の難民が祖国に帰るには3~5年はかかる見通し。各地の地雷除去や居住地など、克服すべき課題が多いためだ。

 先が見通せない中で、支援の会も約70人いた会員が半数に減り、支援金が集まりにくくなってきた。小武さんは「医者、先生と、将来の夢を抱いている子どもたちを応援し続けたい」と協力を呼びかける。西善寺Tel0824(63)8042。

(2016年3月14日朝刊掲載)

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