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写真に刻む命の重み 津波で三次出身の母亡くした佐藤さん 面影たどり広島で講演

 東日本大震災の津波で三次市出身の母を亡くしたフォトジャーナリスト佐藤慧(けい)さん(29)=東京都=が3日、広島市安佐南区で講演した。震災後は母淳子さん(54)が暮らした岩手県陸前高田市に通い、取材と支援を続ける。「もうすぐ節目。母の故郷で命の重みを考えることができた」と言葉を継いだ。

 「全ての命は輝いていると思うようになった。母が教えてくれた」。佐藤さんは被災地のがれきの間に芽吹く雑草の写真を見せ、約100人に語り始めた。

 アフリカなどで取材してきた。淳子さんの死後、道端の草花にもレンズを向けるようになった。「命の大切さを写真で伝える。仕事に意味が見いだせた」と力を込めた。

 淳子さんは三次市の高校から広島大に進み、夫の敏通さん(57)と出会った。結婚し、医師となった敏通さんの故郷岩手に移り住んだ。震災の3年前から陸前高田市で暮らし、障害がある人と関わる手話通訳などのボランティアをしていた。

 18歳で親元を離れた佐藤さん。震災時、取材でアフリカのザンビアにいた。2日後の3月13日に帰国。敏通さんと避難所や遺体安置所を捜し歩いた。1カ月後、愛犬の散歩用のひもを握った淳子さんの遺体と対面した。

 「目や耳が不自由な人を助けようとしていたのかも」。携帯電話に残る穏やかな表情を見て、想像する。

 母の故郷で初めての講演は、若者の自立を支援するNPO法人ブエンカミーノ(安佐北区)に招かれた。震災で犠牲になった一人一人に愛する人がいる―。それを伝える使命を感じる。(長久豪佑)

(2012年3月4日朝刊掲載)

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