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社説・コラム

社説 「民進党」発足へ 信頼回復には政策こそ

 名実ともに、生まれ変わることができるのだろうか。民主党と維新の党が合流する新党の名称が「民進党」に決まった。1度は政権を担った「民主党」の名が消滅することになる。

 「国民とともに進む政党」と党名変更作業に携わった維新の江田憲司前代表は述べた。ただ台湾の新政権を担う党の略称と同じこともあってか「インパクトに欠ける」などの辛口の評が民主支持者からも漏れる。

 そもそも新党への国民の期待感すら広がりを見せていないのが現実だろう。

 新党名は合流の大きなネックと考えられていた。あえて世論調査に諮ったのは現在の名を残したいという声がくすぶる民主への、維新からのけん制でもあったようだ。結果として民主の国会議員たちに少なからぬ不満が残ったことは間違いない。

 しかし曲がりなりにも決まった以上、従うのが筋だ。党名をめぐるドタバタぶりが尾を引くようなら党勢拡大など程遠いことを肝に銘じてもらいたい。

 留意しておくべきは、大方の国民から見れば「民主」という党名に対する愛着など薄いということだ。政権運営に失敗し、下野した民主への不信感の裏返しといってもいい。

 世論調査段階ではもう一つの有力案だった「立憲民主党」の方が望ましいと、民主の岡田克也代表らは考えていたらしい。20年来使われてきた党名が残る上、比例代表で「民主」と書いても繰り入れられる可能性が高いからだ。「民進党」になったのは確かに誤算といえよう。

 ただ、党名論争ばかりに躍起になる状況を有権者はどう見ていただろう。決着で安心している暇はない。もっと重要なのは何のための新党結成なのか、どんな政治を目指すのか、理念と政策を明確に示すことである。

 結党大会が27日に迫るというのに、それが見えてこないのは心もとない。先週明らかになった綱領案では「自由、共生、未来への責任」を結党の理念として掲げ、行財政改革の推進や2030年代の原発稼働ゼロなどをうたうが、安全保障や憲法などへのスタンスも含めて十分な擦り合わせには至ってないようだ。残された時間は少ない。議論を急ぐのは当然である。

 二大政党制を前提とすれば、野党第1党である以上、次の衆院選で政権交代に道を開く役割も問われる。しかし現実問題として国民が目下、野党に何を求めているかも頭に入れる必要がある。安倍政権へのチェック機能と批判の受け皿である。

 政局は緊迫の度合いを増している。4月には二つの衆院補選があり、夏には参院選が行われる。さらに安倍晋三首相が衆参同日選を仕掛けるという観測もある。新党は共産党など他の野党3党と選挙協力することになりそうだ。

 そこに安倍政権も危機感を持っているのだろう。「野合」との批判を強める。それをはね返すためにも、目先の選挙協力で満足するような姿勢では困る。求められるのは関心の高い経済政策も含めて有権者の選択肢たり得る対案であり、民意をしっかりと吸い上げて自公政権に挑む論争力である。

 その軸となるべき「民進党」の責任は重い。新党ありきで政策をおろそかにした過去の政界再編の教訓に学んでほしい。

(2016年3月16日朝刊掲載)

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