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計画の期限内提出断念 島根原発1号機 廃炉届け出1年 中電、地元理解得られず

 中国電力が島根原発1号機(松江市)の廃炉を国に届け出て18日で1年になる。国は電力会社に対し、廃炉届け出後1年以内に具体的な作業の工程を示す廃止措置計画を提出するよう求めている。だが、中電は島根原発の低レベル放射性廃棄物の処理をめぐる虚偽記録問題で地元の理解を得るのに時間がかかり、期限内の提出を断念した。中電初となる廃炉作業の道筋はまだ見えていない。

虚偽記録に不信感

 「地元の気持ちを優先しなければならない。やむを得ない」。ある中電幹部は厳しい表情を見せる。1年以内の提出を見送った理由に挙げるのが、昨年6月に発覚した虚偽記録問題だ。

 中電は島根県、松江市と、廃止措置計画を国に出す前に事前了解を得る安全協定を結んでいる。2月に事前了解を目指したが、虚偽記録問題を受けて地元の議会や住民に「中電の安全管理はずさん」と反発が根強く、実現しなかった。

 国が原発の運転を原則40年と定めたため、中電は昨年3月18日、島根1号機の廃炉を国に届け出た。経済産業省は「廃炉作業を計画的に行うため」として、1年以内に廃止措置計画の提出を求めた。同じ時期に届け出た関西電力、九州電力、日本原子力発電の3社は既に提出済み。中電だけが提出できていない。

税優遇受けられず

 期限内に計画を出せなかったことで税の優遇も受けられない。計画を提出済みの他電力は、廃炉を目的とした解体準備金にかかる法人税の支払いを複数年に分けられる見込み。一方、中電は解体準備金346億円に対する法人税を本年度内に全て支払わなければならない。経産省によると、新年度以降の法人減税のメリットも受けられなくなり、税負担が増える見通しだ。

 中電は地元自治体と議会の了解を得た上で、5、6月ごろに廃止措置計画の提出を目指す構え。しかし、計画を提出できたとしても、課題は山積する。

 とりわけ廃棄物の問題である。松江市の松浦正敬市長は1月、解体で発生する低レベル放射性廃棄物について「ずっと積まれるのは困る」と述べ、原発敷地内への埋設を認めない考えを示した。

 原発を担当する中電の清水希茂副社長は「国の議論を踏まえて対応を検討する」と述べるにとどまり、処分方法を示せていない。燃料プールにある使用済み核燃料も、搬送先になる青森県六ケ所村の再処理工場が稼働するめどが付いておらず、処理の見通しが立っていない。(河野揚)

島根原発1号機
 国産第1号の原発として、1974年3月に営業運転を始めた。東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型の軽水炉で、出力は46万キロワット。点検不備問題を受けて2010年3月に停止したまま、中電が昨年3月18日に廃炉を国に届け出て、同4月30日に廃止した。解体作業を始めるには、国から廃止措置計画の認可を受ける必要がある。

(2016年3月17日朝刊掲載)

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