×

ニュース

シベリア抑留 証言聞き取り 広島市安佐北区の佐々木さん 住民3人に 強制労働の実態まとめる

 広島市安佐北区白木町の井原郷土史研究会の佐々木恒会長(72)が、第2次世界大戦後、シベリアに抑留された地元住民3人の証言の聞き取りを終えた。厳寒の地での収容所生活や強制労働の実態を会誌にまとめ、平和の尊さを伝える。(中川雅晴)

 最後の聞き取り先は同町井原の中山敏雄さん(89)。1948年11月まで収容所を転々とさせられたという。佐々木会長が14日、中山さん宅を訪ねた。

 聞き取りで中山さんは「食料は黒パンと具のないスープだけで多くの仲間が栄養失調で亡くなった。ネズミなどを焼いて食べ、飢えをしのいだ」と当時を振り返った。

 さらに「収容所を移る際、ソ連兵に『日本に帰れる』とうそをつかれて連れ出された」と証言。「日本の地を踏みしめた時、涙がこみ上げた。あんな過酷な体験は、もう誰にもしてほしくない」と訴えた。

 佐々木会長は2014年秋、同町井原のシベリア抑留者について本格調査を開始。佐々木会長によると、井原には帰還した抑留者が約20人いた。多くは亡くなり、現在、聞き取りできるのは中山さんを含め80~90歳代の男性3人という。

 中山さんと別の1人の証言は6月発行の会誌に掲載する。もう1人の証言は昨年の会誌に載せた。6月の会誌は約170部作成し、井原小や近くの公民館などに無料で配る。佐々木会長は「戦争の痛みを肌身で知る世代。平和について考えるきっかけにしてほしい」と話している。

(2016年3月17日朝刊掲載)

年別アーカイブ