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平和公園で証言 佐伯さん半生記 朗読劇で届け 被爆者の叫び

 福島第1原発事故から1年の節目を控えた3月10日、平和記念公園(広島市中区)の原爆供養塔で掃除や草取りを続けた被爆者佐伯敏子さん(92)=東区=の半生記の朗読劇が大阪市で上演される。朗読グループ「伝の会」の寺西郁雄代表(72)=大阪府寝屋川市=は「佐伯さんの証言を通してヒロシマとフクシマを考えたい」と話す。(金崎由美)

 佐伯さんは母や兄など肉親13人を亡くし、自らも8月6日に入市した。路上で助けを求める負傷者に何もできなかったことを悔い、1955年に現在の原爆供養塔ができて間もなく日参し始めた。

 「墓守」は脳梗塞で倒れた98年まで続けた。むしろに座り、観光客に原爆の悲惨さを語り掛けた。供養塔に眠る7万体のうち名前が判明した遺骨の遺族も捜した。

 大阪府門真市職員だった寺西さんは72年、供養塔前で佐伯さんと出会って以来、親交を重ねる。佐伯さんが倒れてからは、自らつづった佐伯さんの半生記を毎年8月5日に供養塔前で朗読している。

 演目は「広島に歳はないんよ」。佐伯さんが「原爆を過去にしてはならない」と説く際の言葉で、佐伯さんの著書名でもある。

 「放射能が一人一人の人生や地域を根底から変えたフクシマは、ヒロシマとつながっている。今こそ佐伯さんの訴えをかみしめたい」と寺西さん。介護老人保健施設で静かに暮らす佐伯さんは「被爆者の体験を聞いた人は伝え続ける重い責任があるんよ。寺西さんの思いは必ず伝わる」と喜ぶ。

 大阪市立阿倍野市民学習センターで午後6時半から。無料。

(2012年3月5日朝刊掲載)

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