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「政府の姿勢に疑問」 ヒロシマから抗議の声 法制局長官核使用発言

 横畠裕介内閣法制局長官が「憲法上あらゆる種類の核兵器の使用が禁止されているとは考えていない」との見解を示した18日、被爆地広島には疑問と怒りの声が渦巻いた。

 「核兵器廃絶への政府の姿勢に疑いの目を向けざるを得ない。核兵器保有論者の政治家たちの追い風にならなければいいが」。広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(74)は声を落とした。主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)を前に来月に市内である外相会合での核軍縮議論に水を差しかねない、と気に掛ける。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(71)も「国是の非核三原則が口先だけに陥っていると感じる」と憤る。

 横畠氏の発言は「自衛のためなら必要最小限度の核兵器を使うことはできる」と受け取ることもできる。「核兵器の非人道性を考えれば、大きくても小さくても使ってはならないというのが国際社会の潮流だ」。広島市長在任時、原爆の日の平和宣言で「核の傘」に頼らない安全保障を訴えた平岡敬さん(88)は厳しく批判する。「核兵器の存在を認めないヒロシマから抗議の声を上げるべきだ」

 広島市立大広島平和研究所の河上暁弘准教授(憲法学)も「むしろ使用を明確に否定できるはずだ」と指摘する。横畠氏はまた、核使用が現実的ではないとの見方も示した。これに対し河上准教授は「現実的ではないと言うなら、もっと丁寧に説明しないと。国民に不安が広がっても仕方ない」と語った。(水川恭輔)

(2016年3月19日朝刊掲載)

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