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検証 岩国市合併10年 観光振興 新組織 情報共有し発信 旧町の自然や特産紹介

 「桜の見頃はいつ」「紅葉スポットはどうやって行けばいい」―。岩国市岩国の錦帯橋近くにある岩国市観光協会には年間を通じて、広い市域に点在する観光地への問い合わせ電話が入る。

年間300万人訪問

 だが、同協会が普段使う「岩国市」は、旧岩国市を指す。「旧市域外にある、こちらが知らない場所について聞かれることも多い」と米重良治事務局長(54)。その都度インターネットなどで調べ、分からない場合は周辺の総合支所の地域振興課などの連絡先を伝えている。

 年間300万人の観光客が訪れ、県内を代表する観光地である岩国市。観光協会は岩国市のほか、由宇、周東、錦、美和に計5団体が合併前のまま残る。合併時に統合の動きはあったものの、「地域行事が減らされるのではないか」などといった不安から、実現に至らなかった。以来、協会間の連携や情報交換はほとんどなく、それぞれが合併前のエリア内だけで活動している。

連携不足嘆く声

 旧町エリアの協会からは連携不足を嘆く声も上がる。市協会や市が首都圏で観光宣伝を行う際、ほとんど声が掛からないという。ある協会の一部からは「錦帯橋やレンコンだけでなく、山間部にもいいものがあるのに…」との声も聞こえる。

 こうした背景から昨年11月、市の主導で五つの観光協会と岩国商工会議所による「岩国観光プロモーション戦略協議会」が誕生した。新組織で情報を共有し、「ひとつの岩国市」を発信するのが目的だ。支援員2人を雇用し、事務所も構えた。温泉、自然、特産品などジャンル別に市全域を紹介する観光パンフレット「陶酔 岩国」(A4判、18ページ)が間もなく完成する。

 協議会の観光戦略マネージャー星光一さん(56)は「各協会の思いを聞き取り、観光資源をどういかし、発信していくかを探りたい」と意気込む。16年度内に全域の観光情報を収集、発信できる態勢を整えるという。

 合併10年。岩国錦帯橋空港は開港3年が過ぎ、今月末には羽田線の増便のほか、那覇線も就航するなど観光地としての魅力やアクセスは向上している。とはいえ、一体的な受け皿づくりはようやく始まったばかりだ。(大村隆)

岩国市の観光の現状
 市観光振興課によると、2014年の観光客は297万人。県内市町で下関、山口市に次いで3位。観光地別では錦帯橋62万人、岩国城ロープウエー32万人、道の駅ピュアラインにしき19万人―などとなっている。一方、約9割が日帰りで、滞在時間も4時間未満が大半と短く、使用金額も3千円未満と少ない。通過型観光地から滞在型観光地への移行が課題となっている。

(2016年3月19日朝刊掲載)

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