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3市長、波及効果を期待 国機関一部移転方針 岩国 基地機能強化に懸念も

 政府が22日に決定した国機関の地方移転の基本方針で、県内には3研究機関の拠点の設置が明記された。防衛装備庁艦艇装備研究所(東京)は2021年度にも、岩国市で水中無人機の試験評価施設を稼働させる。移転を働き掛けていた岩国市の福田良彦市長たちは歓迎する一方で、米軍や自衛隊の基地機能強化に反対する団体からは懸念も聞かれた。(村田拓也、野田華奈子)

 艦艇装備研究所は、水中の広い範囲で長期間、警戒監視や情報収集をする無人機の性能を評価する「岩国海洋環境試験評価サテライト(仮称)」を新設する。大型水槽や傾斜試験設備、模擬実験装置を整備する方針で、16年度に県、岩国市と設置条件を協議する。

 福田市長は「技術開発や研究の成果は、民間部門への転用が期待できる。関連企業が進出すれば、地域活性化につながる」とした。共同研究を担う民間企業の誘致を進めるとして「移転に向け、できるだけの協力態勢をつくりたい」と述べた。

 市内には、海上自衛隊で唯一の航空掃海部隊を備える岩国航空基地に加え、米海兵隊岩国基地もある。市民団体「愛宕山を守る会」の岡村寛世話人代表は「防衛関係施設が集積すれば、基地機能はさらに強まりかねない。市の将来を考えると疑問」と苦言を呈した。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA、東京)は16年度、人工衛星の画像を解析して災害対応や防災に生かす「西日本衛星リモートセンシング防災利用研究センター(仮称)」を宇部市に開く。久保田后子市長は「JAXAの西日本の拠点ができ、都市ブランドの向上につながる」と喜んだ。

 水産総合研究センター(横浜市)は、共同研究拠点となる地域連携室を17年度、下関市の水産大学校に設置する。中尾友昭市長は「水産業の振興にプラスとなる」とした。

 県が政府に提案した3機関全てで一部機能の移転が実現する見通しで、村岡嗣政知事は「新たな産業づくりなどで成果を出せるよう準備を進めたい」と意気込んだ。

(2016年3月23日朝刊掲載)

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