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連載・特集

70年目の憲法 第3部 分岐点を生きて <2> 若者と政治

安保デモ 当時の姿重ね 前文と現実 落差許せず

 学生運動の全盛期の1968~69年、東京・中野の下宿先。仲間と酒を飲んでは政治を語った。尽きなかった政権批判。「権力は腐敗するもの」と憲法の三権分立に学んだ。早稲田大法学部に在籍していた広島弁護士会の弁護士、山田延広さん(67)は懐かしむ。「政治を考えるのは学生の義務だった」

「権力」に反発心

 当時、学問の自由を求める学生が大学を封鎖。山田さんは大学に突入する機動隊が「権力」の象徴に思えた。強い反発心を抱いた全共闘世代のエネルギーは、ベトナム戦争の激化とともに70年安保闘争へ向く。

 戦争に加担している―。山田さんは米海兵隊岩国基地(岩国市)など国内基地からの米軍機の出撃に怒った。安保闘争の焦点は米軍の駐留を認めた日米安保条約の是非。大学1年で憲法を学び、世界恒久平和の実現をうたう前文にほれただけに、憲法と現実のギャップが許せなかった。仲間と連れ立って日常的にデモに参加した。

 「安保反対」「打倒内閣」。言論・表現の自由の実践を意識し、声を張った。当時、高校生も多くいたと記憶する。憲法は自由や権利の保持のため、国民に「不断の努力」を求める。デモはその一つの形だった。「若者も主権者として政治を自分の問題に置き換えて考え、行動に移していた。闘ってた」。山田さんはそう強調する。

反対唱え街頭へ

 昨年9月、安倍政権は集団的自衛権の行使を認める安全保障関連法を成立させた。日本は今、再び安保に揺れる。山田さんは一貫して安保反対を唱え、今も街頭に立つ。安保関連法の成立から半年たった今月19日、広島市中心部をデモ行進した。周りの仲間は同世代が中心だ。行き交う人の関心もどこか薄い。当時の熱とつい比較してしまう。

 79年、地元の広島で弁護士になって以来、労働問題をはじめ、消費者や貧困をめぐる多くの問題の違憲訴訟に携わる。憲法に裏打ちされた国民の暮らしや権利が縮むことに抗議の声を上げ続けてきた。常に憲法を胸にとどめた。支えは学生運動に関わってきたというプライドだった。

 大学生を中心としたグループ「SEALDs(シールズ)」の若者が声を上げる姿は当時の自分と重なる。立憲主義を前面に参院選を前に政治を動かすうねりをつくろうとしている。若い母親たちの動きも出てきた。

 「若者、頑張ってほしいね」と山田さん。強い口調であおる当時の「アジ演説」と比べ、「今の子は自分の言葉で語っている。いい世代だね」。(胡子洋)

(2016年3月24日朝刊掲載)

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