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連載・特集

『生きて』 マツノ書店店主 松村久さん(1933年~) <7> 山登り

客と一緒にハイキング

  貸本屋のマツノ読書会経営の傍ら、運動不足解消にと没頭したのが山登りだった
 昔から山登りは好きだった。徳山動物園の北側にある標高約250メートルの岐山(きざん)を、毎日一人で登りよった。朝夕は店が忙しいから、昼に店をパートさんに任せて出掛けた。日頃、店に閉じこもっているから山に行くと開放される。仕事は好きだからストレスは全然たまらなかったんだけど、体を動かすと気分が良い。毎日宿題みたいに登っとった。

 登り切ったうれしさは格別で、山口県内のいろいろな山に登るようになった。周南市の莇ケ岳(あざみがたけ)や、広島、島根県境にそびえる岩国市の寂地(じゃくち)山(さん)、山口市の東鳳翩山(ひがしほうべんざん)など30以上の山に何度も登りにいった。店の経営にも余裕ができた30~40代が一番登っていたでしょうね。60歳くらいまで定期的に登った。登山道が整備されている所は少なかったから、5万分の1縮尺の地図を見て、麓の集落とか近くの山を目印にして歩いた。

  店の機関紙「ランペル」に、登った山の地図や特徴、登ったルートなどの情報を掲載した
 当時はまだ、県内の山を紹介するようなガイドブックがなかった。せっかく好きで山に行ってるんだから、店の営業に生かそうと思って。お薦めの山ランキングなんかも掲載して人気だった。

 ハイキングのガイドブックを出版しようと本気で思ったこともあったけれど、やめた。山道は変化するものだし、自分の本を見て登った人が遭難でもしたら大変だからね。

  顧客に呼び掛けて一緒にハイキングすることもあった
 山好きのお客さんたち5人くらいで行くこともあれば、30~40人参加者を募って貸し切りバスで行くハイキングツアーもやっとった。徳山を朝出発して夕方に帰る。ツアーは平日に行くことが多かったと思う。

 少し前にはやった「川は流れる」とか「山のロザリア」なんかを休憩時間にみんなで歌って、頂上で弁当を食べた。一人で登るのも好きだったけど、みんなでわいわいしながらのハイキングも楽しかったね。山登りは間違いなく、今の健康につながっています。

(2016年3月25日朝刊掲載)

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