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社説・コラム

社説 民進党結党大会 国民の冷めた目 意識を

 健全な野党があってこそ政党政治が活性化し、政策も磨かれる。その原則に立つなら大いに期待すべきところだ。きのう新党「民進党」の結党大会が開かれ、正式に旗揚げした。

 民主党代表から初代代表に就いた岡田克也氏は「日本に政権交代可能な政治を実現するためのラストチャンス」と意気込んだ。4月の衆院補選、そして夏の参院選。さらに与党内で公然と語られる衆参同日選に向け、安倍政権との対決姿勢を一段と強めていく構えという。

 「自民党1強」の政界において「多弱」と呼ばれた野党勢力が再編され、衆参156議席と存在感ある野党第1党が船出したことは、むろん望ましい。

 ただ、民主による維新の党の事実上の吸収合併が2党合流の本質であり、離党組の「復帰」も多い。これなら看板の掛け替えにすぎないと国民に見透かされたのだろう。共同通信の世論調査によれば民進党に「期待しない」という回答が実に3分の2以上を占めた。注がれる冷ややかな視線を、強い危機感を持って受け止めてもらいたい。

 国民の不信感は簡単には消えまい。民主は政権交代を果たしながら稚拙な政権運営を繰り返し、党内対立の果てに選挙で惨敗して下野した。岡田氏は「政権与党で期待に応えられなかったことを深く反省する」と大会で口にしたが、政権時代の失敗の検証を党として怠ってきただけに何を今更との声もあろう。

 党を刷新したというなら、その証しをもっと明確に示す必要があるのではないか。

 一つは党人事である。待機児童問題の国会追及で時の人になった山尾志桜里氏を衆院当選2回ながら政調会長に起用した。世論対策の面を差し引いたとしても若返りは評価に値する。ただ党全体を見回すと「いつもの顔ぶれ」が目立ち、岡田氏や幹事長となった枝野幸男氏も党混迷の当事者といえる。いっそのこと代表選の大幅な前倒しなどは考えられないのだろうか。

 そして何より重要なのは新党が何をやりたいのかはっきり示すことだ。国会論戦や選挙公約に欠かせない基本政策であり、安倍政権への対立軸でもある。その全体像が結党宣言や綱領を見る限りは、有権者からまだ見えにくい。一方で、共産党などとの目先の選挙協力の方が先に進むのは気掛かりだ。

 例えば綱領においては「原発に頼らない社会を目指す」とうたうが、原案にはあった「2030年代の原発稼働ゼロ」という具体論は途中で消えた。

 安倍政権が改憲姿勢を鮮明にする中で、憲法についても歯切れがいいとは思えない。立憲主義と平和主義を守る姿勢を強調しながらも「時代の変化に対応する憲法を構想する」とする。どう考えればいいのだろう。

 さらにいえば消費税増税問題や環太平洋連携協定(TPP)といった難題にも、腰が据わっていないように見える。

 むしろ民進党として子育て支援や雇用格差是正などを参院選の主要争点に挙げたいようだ。当然大切なテーマであり、支持拡大に有効かもしれない。ただ国の行く末を左右する重要政策で踏み込んだ議論を避けるなら物足りない。政権批判の一時の受け皿になれたとしても、岡田代表のいう再度の政権交代には遠いことを肝に銘じてほしい。

(2016年3月28日朝刊掲載)

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