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縄文期の死因「暴力」1.8% 山口大助教ら発表 「戦争は本能」の反証に

 狩猟採集生活だった縄文期の日本列島で、暴力や戦争による死者の割合は1・8%にとどまることを、山口大の中尾央(ひさし)助教(34)=科学哲学=や岡山大大学院の松本直子教授(47)=考古学=たちの研究グループが人骨の分析から明らかにした。世界的に議論となっている「戦争は人間の本能」とする学説に、再考を迫る内容。英科学誌上で30日に発表した。

 中尾助教らは、紀元前1万3千~800年の国内遺跡242カ所の報告書を基に調査。人骨2582点のうち成人が1275点。その中で矢尻が刺さっていたり頭蓋骨に穴があったりして暴力が死因とみられるのは23点と1・8%だった。

 戦争による死者数は暴力全体の死者数に含むため、縄文期の日本列島では戦争はほぼなかったことがデータで裏付けられたとしている。この時代は人口が少なく、資源を奪い合う必要がなかったことなどが理由に挙げられるという。

 一方で、同時代の欧州、北米やアフリカでは受傷した人骨の割合が12~14%に達するとの研究報告があり、「戦争は人間の本能」とする学説の根拠になっている。今回、少なくとも日本列島で戦争が皆無の時代があったという調査結果は反論材料になるとみる。

 中尾助教は「戦争は人間の本能に根差したものではなく、環境や文化などさまざまな要因によって起きると考えられ、防ぐことはできるはずだ」と指摘。研究グループでは戦争があった弥生期の研究も進めており、「比較をして戦争に至る条件を解き明かしたい」としている。(宮野史康)

(2016年3月31日朝刊掲載)

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