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連載・特集

ヒロシマの声 外相会合を前に <2> 広島平和文化センター理事長・小溝泰義さん=広島市中区

核依存減らす具体論を

 主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の参加7カ国は、核兵器を持つ米国、英国、フランスと、米の「核の傘」の下の主要な国々からなる。被爆地での外相会合では、安全保障上の核兵器への依存度を減らすために具体的に何をすべきかの議論を求めたい。

 核兵器への依存を続ければ、北朝鮮だけでなく、他の国への拡散も誘発しかねない。核兵器によるテロや事故が起きるリスクもある。日本は傘の下にある各国とこうした認識を共有し、安全保障政策を転換する方向で米と対話するべくリーダーシップを発揮してほしい。

 中長期的には、相互理解や多様性の尊重による安全保障の構築が欠かせない。広島平和文化センターが事務局を務める平和首長会議(会長・松井一実広島市長)も米や各国への働き掛けを強めている。

打つ手に影響も

 ≪平和首長会議は、法規制を含む核軍縮策を議論する国連作業部会への出席を各国に公開書簡で要請した。しかし、2月の初会合には米、英、フランスを含む保有国は参加しなかった。≫

 核兵器禁止条約は「核兵器なき世界」への重要な転換点になるだけに、その在り方を議論する会合への不参加は残念だ。この数年、非保有国の主導で核兵器の非人道性に焦点を当てる議論が効果を上げてきたからこそ、保有国は議論を数で押し切られるのを懸念したのだろう。

 ケリー米国務長官たち保有国の政権の中枢が今回、被爆地を訪れる。原爆資料館を見学すれば、核兵器の被害の悲惨さが人間として必ず大きなインパクトを持ち、彼らの打つ手に影響すると思う。今後、国連作業部会との間に何らかの連携が生まれることを期待したい。会合は5、8月にもある。

オバマ氏に期待

 ≪核軍縮は、米と、もう一つの核超大国ロシアとの関係の改善も鍵を握る。作業部会での初会合では、平和首長会議の事務総長として「今こそ、政治指導者が果断なリーダーシップを発揮するべきだ」と訴えた。≫

 米ロの過去の核軍縮も、国家間の対立が極まる中、指導者同士の歩み寄りで実現してきた。「核兵器なき世界」を訴えてきたオバマ米大統領が、指導者として責任あるメッセージを発する場として、被爆地は非常に意味がある。広島への訪問を期待しているし、あって当然だと思っている。(水川恭輔)

こみぞ・やすよし
 1948年、千葉県生まれ。法政大法学部卒。70年に外務省へ入り、国際原子力機関(IAEA)事務局長特別補佐官や、ウィーン国際機関政府代表部大使などを歴任。2012年11月にクウェート大使を最後に退職した。13年4月、広島平和文化センター理事長に就任し、平和首長会議の事務総長も務める。

(2016年4月2日朝刊掲載)

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