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カナダ ステファン・ディオン外相 インタビュー全文

質問)大臣自身の広島訪問の回数は。
回答)以前、日本を訪れた時に東京と福島に行きましたが、広島に行くのは今回が初めてです。

質問)今回の広島訪問で、何を経験したいですか。
回答)長い歴史のある広島という都市を訪問するのを、楽しみにしています。広島は美しい自然、文化財、そして有名なお好み焼きなど、おいしい食べ物で知られています。また、広島とカナダの間に存在する草の根レベルの強いつながりに、直に触れることも楽しみにしています。

カナダと広島は、事業面での連携、学術面での提携、息の長い民間レベルでのつながりなど、多くの面で活力ある協力関係に恵まれています。

カナダと広島は、自動車、航空宇宙、建材、食料生産などの部門において、多くの企業間で活発な協力関係を築いています。 元研究者、大学教授として、カナダと広島に拠点を置く機関の間で、教育面での連携が増えているのをうれしく思います。最近、注目すべき出来事の一つは、2014年11月にブリティッシュ・コロンビア州国際教育委員会と広島県教育委員会が「教育分野の協力に関する覚書」を締結したことです。この覚書が、その後の広島県教委とブリティッシュ・コロンビアの学区間の学生の交流、教員研修に関する覚書につながりました。また、カナダと広島の中学、高校の間に姉妹校関係があり、カナダと広島の大学の間には、多数のパートナーシップ協定が存在します。

もう一つ、民間レベルの交流を推し進めている重要な立役者が1988年に設立された広島カナダ協会です。この組織は積極的に活動しており、400人以上の会員が存在します。会員は年に何度か集まり、イベントを企画し、カナダに会員を派遣し、定期的にニュースレターを発行しています。

広島には、1996年からカナダ政府名誉領事館があり、領事館業務や二国間事業の推進、年齢を問わない民間交流の補佐をしています。

個人的には、1988年から私の故郷であるモントリオールと姉妹都市関係にある都市を訪問できることを、とても有意義に思っています。実際のところ、広島は2001年から、毎年7月に「モントリオールの日」を設け、文化的な公演や展示会などを行ってきました。

質問)今回の外相会合への期待は。
回答)7カ国のパートナーと、広範囲にわたる喫緊の国際安全保障問題について建設的な対話を持つことを期待しています。7カ国の中でも、カナダと日本は多くの問題に関して方向性が似ており、日本が議長国である今年、協力して問題に取り組めると期待しています。7カ国における日本の検討課題と優先事項は私たちと一致しています。私たちは、テロ、過激派組織「イスラム国」(IS)との戦い、海上安全保障、核不拡散と軍縮、朝鮮半島やロシア・ウクライナの緊張関係のような国際安全保障問題における共通の利益を推し進めていきたいと考えています。今回の外相会合で、女性、平和、安全保障、サイバー問題についても討議でき、うれしく思います。

質問) 特に、国際平和に向けて議論したい課題は。
回答)カナダ政府の意欲的な国内、国際政策は、私の誇りです。初期の主要なプロジェクトでは、国際的な対IS協調体制や2万5千人のシリア難民をカナダに定住させるプロジェクトなどに拠出の焦点を定め直しました。3月1日現在、2万6千人を超えるシリア難民がカナダに到着しています。

私たちは、国連や他の多国間機構という場で、重要な地球規模の問題に関与し、リーダーシップを発揮することで、カナダの価値と利益を高めていくつもりです。他にも、平和活動、仲介、紛争予防への支援を強化し、最終的には大量破壊兵器の完全廃棄を目的とした国際的な核不拡散と軍縮への努力をこれからも進めます。

私たちはまた、包括的で説明責任を果たす統治、平和的な多元主義と多様性への敬意、そして女性と難民の権利を含んだ人権の価値の推進に取り組んでいます。これらこそ、さらなる世界平和と安全保障を実現する鍵だと私たちは考えています。カナダにとって「G7」とは、これらの問題でリーダーシップを発揮するために、方向性を同じくする仲間が共に働く重要なフォーラムです。

質問) 国際平和に向けて議論したい解決策は。
回答)最近の北朝鮮の核ミサイル発射テストを見れば分かるように、世界平和をつくり出そうと思えば、大量破壊兵器の拡散とその運搬手段を防ぐためにさらに前進する必要があります。カナダは、核拡散防止条約(NPT)や包括的核実験禁止条約(CTBT)、生物兵器禁止条約、化学兵器禁止条約など、大量破壊兵器による世界的脅威を軽減するために重要な役割を果たす核不拡散、軍縮のための条約や協定を高く評価しています。国際社会は、これらの条約、協定への国際的な支持と順守を確保するため、信念を持って、足並みをそろえて共に取り組まなくてはなりません。その中にはシリアで化学兵器を使用した者たちに責任を問うことも含まれます。カナダはまた、核兵器製造に使用される物質の製造を禁止する兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約の交渉も積極的に進めています。カナダは世界平和の障害を克服する手段として、建設的な対話の重要性を固く信じており、建設的に関与しようと決めています。

質問)大臣は「核兵器なき世界」に賛同されますか。どうすれば実現できると思われますか。
回答)カナダは核兵器なき世界を積極的に支持しています。関係者すべてを含んだ軍縮を目指して、現実的、かつ政治的に実現可能な手法を推進し、この目標到達のために全力で取り組んでいます。

私たちが支持している核不拡散と軍縮に向けた段階的なアプローチとは、核兵器の拡散を防ぎ、現存する核兵器の貯蔵量を減らし、最終的には廃絶するものです。このアプローチには、全世界を対象としたNPT、CTBTの完全履行、検証可能なカットオフ条約が含まれています。このアプローチを支持するにあたり、カナダは核軍縮憲章国際パートナーシップに積極的に参加しています。核軍縮憲章国際パートナーシップの目的は、多国間核軍縮を検証するために欠かせないであろう検証ツールを開発することです。また、私たちは、2015年秋に国連総会が設立した作業部部会にも「核兵器のない世界を実現し維持するために締結されるべき効果的な法的措置、および規範を実質的に取り扱う」ために参加しています。私たちは、この段階的なアプローチが、検証可能な形で地球上の核兵器廃絶を成功させる最善の道だと信じています。

質問)広島の若者たちに「平和のためにこれをしてほしい」という提案はありますか。
回答)若者は今日の世界で、特に平和推進に置いて重要な役割を果たしています。カナダにおける私たちのゴールは、地域社会、国、世界への関与に関する対話に、若者を引き込むことです。

カナダでは、首相は単に政府のリーダーではなく、政府間問題・青少年担当省の長を務めることになりました。つまり、カナダの歴史上、初めて「若者」が首相の職務の一部になったということです。

私は、若い人たちが、カナダの日本の共同プログラム=日本で言えば二国間のワーキングホリデー、カナダで言う「IEA(国際体験カナダプログラム)=を経験するよう勧めています。このプログラムでは、カナダ、日本の若者が6500人ずつ、お互いの国を訪れて働くことができます。日本の「かけはしプロジェクト」も、青少年交流プログラムの一つで、こういったプロジェクトのおかげで、国が異なる人々をつなぐことができます。このプログラムを通じて、昨年の秋にはカナダ人のグループが日本を訪れ、反対に、この冬には日本人の若者たちがカナダにやってきました。

平和で、多元的で、回復力の早い社会をつくり上げるための鍵は若者です。彼らが自分たちの地域社会で平和のために貢献することで、その他の場所で平和や安全保障を築く助けとなるのです。

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