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ヒロシマの声 外相会合を前に <4> CTBTシンポで発言した広島女学院高卒業生・倉光静都香さん=廿日市市

核廃絶 当然と分かって

 やって当然のことが、できていない。例えば、1996年に国連総会で採択された、核爆発を伴うあらゆる核実験を禁止する包括的核実験禁止条約(CTBT)。米国など発効に必要な8カ国が批准しておらず、進展しそうにない。外相らは広島で核兵器の恐ろしさに触れ、核兵器廃絶には今のスローペースでは駄目だと分かってほしい。

人間として声を

 ≪広島女学院高(広島市中区)の卒業を目前に控えた1月から2月にかけて、オーストリア・ウィーンで開かれたCTBT署名開始20年のシンポジウムに招待された。きっかけは昨夏、広島市であったCTBT早期発効を目指す「賢人グループ」会合。米国のペリー元国防長官の講演会後、CTBT機構準備委員会のゼルボ事務局長から声を掛けられた。≫

 講演会で思い切って質問しました。米国はなぜ、核拡散防止条約(NPT)6条の義務に沿った核軍縮の多国間協議を、リーダーシップを持って進めないのかと。ペリー氏の答えは「オバマ大統領に意欲はあるが、今は政治的に難しい」だった。「核兵器のない世界」の提唱者の一人であるペリー氏からも前向きな発言をあまり聞けず、ショックを受けた。

 その後、ゼルボ氏が声を掛けてくれた。「ヒロシマの一人の人間としての声を大事にしてほしい」と。その縁で参加したシンポでは、被爆者の思いを紹介しながら早期廃絶を訴えた。ゼルボ氏たち核軍縮の専門家も、ヒロシマの声をてこに現状を打開したいのだと感じた。

 今月10、11両日にはケリー米国務長官ら7カ国の外相が広島に集う。平和記念公園を訪れ、「早期廃絶は困難」という政治的な理屈ではなく、一人の人間としての思いを素直に発言してほしい。広島の私たちが受ける悲しみや恐怖に重なる思いはきっとある。それが廃絶への力になると思う。

若者の発信大切

 ≪同窓生たちは平和記念公園の碑巡りや、核兵器廃絶の署名など平和活動に熱心だ。自身も今秋に米国の大学に進み、ヒロシマの発信、交流を続ける。≫


 日本の若者が原爆被害の実態を学び、発信するのは大切だ。米国やロシアの核実験の「ヒバクシャ」にも関心を持てば、「核兵器のない世界」を求める声はさらに世界へ広がる。私もインターネットなどを通じて、核問題への関心を国際的に高められる仕掛けができないかと考えている。(水川恭輔)

くらみつ・しずか
 1996年生まれ。広島女学院中に入り、今年3月に広島女学院高を卒業した。広島市で昨年4月に開かれた国際会議「クリティカル・イッシューズ・フォーラム」では米国、ロシアの学生と核軍縮について議論。核兵器の非人道性をテーマに発表した。

(2016年4月5日朝刊掲載)

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