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中電、原発で提携強化 西日本3電力と 安全対策など 月内にも協定

 中国電力が関西電力、四国電力、九州電力の3社と原発の安全対策や事故時の対応、廃炉技術について提携を検討していることが5日、分かった。今月中にも協定を結ぶ方向。西日本の大手電力4社の連携で、東京電力福島第1原発のような重大事故時に協力し合う体制を強化し、膨らみ続ける原発の安全対策費を節減する狙いだ。

 大手電力同士が原発の幅広い分野で提携するのは初めて。4社を含めて大手電力など12社が2000年に事故時の資機材の提供や人員の派遣で協力する協定を結んでおり、今回の提携で範囲を広げる形になる。

 4社は具体的な提携内容を詰めており、中電は近く情報共有の窓口を設ける方向で検討している。安全対策では、資機材の運用や防災訓練の実施などで連携するとみられ、重大事故が起きた場合に協力しやすい体制を整える。

 提携によりコスト削減も目指す。島根原発2号機(松江市)は再稼働に向けて原子力規制委員会の審査を受けている。安全対策費は約4千億円と増加を続け、追加工事でさらに膨らむ見通しだ。各社で安全対策の情報共有を進めてコスト増を抑える。

 廃炉技術でも連携する方針。中電は昨年3月、島根1号機の廃炉を決め、他の3社も廃炉原発を抱えている。約30年に及ぶとされる廃炉作業は各社とも経験が少ないため、人材融通や技術開発で協力したい考えだ。

 1日の電力小売りの全面自由化で、大手電力の経営は一段と厳しくなっている。今後、さらに原発を巡る提携関係が深まる可能性もある。

【解説】再稼動 政府意向映す

 中国電力を含む西日本の大手電力4社が原発の安全対策や事故時の対応などで提携を検討している背景には、原発の再稼働を進めたい政府の意向がある。今でも地元自治体や住民に再稼働への不安が根強い中、大手電力同士の連携を強めて安全対策の強化と地元の理解につなげたい考えだ。

 林幹雄経済産業相は3月、各大手電力の社長たちに原発事故の防災対策で地元自治体との協力を強めるよう要請した。さらに事故対策などで電力会社同士の協力も求めていた。

 東京電力福島第1原発事故をきっかけに発足した原子力規制委員会は、各原発の再稼働について審査している。現在、稼働しているのは九州電力の川内(せんだい)原発(鹿児島県)だけ。政府は大手電力同士で規制委がチェックするポイントなどの情報を共有できれば、審査が進みやすくなるとの思惑もあるようだ。

 原発はコスト面でも厳しさが増している。島根原発2号機(松江市)の再稼働の審査を受けている中電は、規制委の指摘を受けて安全対策費が膨らみ続けている。現在は約2年前の審査申請時の4倍になり、どこまで増えるのかが見通せなくなっている。

 1日の電力小売り全面自由化を受け、異業種からの新規参入も増えており、業界の競争は激化している。これまで通り大手電力がそれぞれ原発を単独で維持するのは難しい状況になりつつあり、各電力会社も提携が必要と判断したとみられる。(河野揚)

(2016年4月6日朝刊掲載)

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