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連載・特集

広島外相会合 4月10日・11日 核兵器なき世界へ

 1945年8月6日。広島デルタの市民の頭上でさく裂した原爆は、老若男女の命を一瞬のうちに奪い、街を壊滅させた。辛うじて一命を取り留めた被爆者さえも、さらされた放射線による健康被害に苦しみ、71年後の今も続く。

 「同じ思いを誰にもさせてはならない」。被爆者の切なる願いである核兵器廃絶。主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に先立ち、10、11日に広島市である外相会合に集う7カ国と欧州連合(EU)は、それに向き合わねばならない当事者である。

 米国は世界で初めて人間に原爆を投下し、今も約7千発の核兵器を持つ。英国、フランスも同じく核を保有する。ドイツ、イタリア、カナダが加わる北大西洋条約機構(NATO)も安全保障を核に頼る。そして、被爆国である日本も。

 被爆者の平均年齢は80歳を超えた。核軍縮は足踏みが続く。それでも日本被団協代表委員の坪井直さん(90)=西区=は力を込める。「不撓(ふとう)不屈(ふくつ)。最後の一呼吸まで、核兵器廃絶を諦めない」

 諦めない―。それは、非人道的な死を強いられた全ての原爆犠牲者に対する私たちの責務だ。

 海を越え、被爆地に集う市民らがいる。ヒロシマに寄り添い、ともにその責務を負うとの思いを強めている。

 外相らは11日、平和記念公園(中区)にそろって足を踏み入れる。原爆資料館を訪れ、原爆慰霊碑に花を手向ける。

 世界の「ヒロシマ市民」は外相らに求める。ヒロシマを見てほしい。そして聞き、感じてほしい、と。核兵器なき世界へと踏み出す一歩は、そこから始まるのだから。(文・水川恭輔、写真・山本誉)

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「第3次世界大戦を阻止しよう。平和を築こう」(広島市国際交流推進員、ジャンベルナール・ガリエピさん(35)=廿日市市。カナダ・モントリオール出身)

「平和は神のたまもので、人間の責任だ。悲惨な過去の記憶が平和につながる。命を守る人を育てよう」(幼稚園長の神父、ベッラ・アルベルトさん(56)=中区。イタリア・バレーゼ出身)

「この惑星を破壊してはいけない。地球に平和を」(留学生、ファニー・ハーランさん(23)=中区。ドイツ・デュッセルドルフ出身)

「どうか、世界に平和を。一生癒えることのない(原爆、戦争の)傷を直視して」(洋菓子店経営、市原ジョスリーヌさん(62)=中区。フランス・トゥール出身)

「地球規模で考え、足元から行動を」(英語教諭ファーガソン・ユエンさん(47)=西区。英国セント・アンドリュース出身)

「大臣は平和公園を訪れ、核攻撃の現実を感じて」(NPO法人スタッフ、マギー・フィニックスさん(63)=左、西区。米オハイオ出身。右は夫のバーントさん(62))

(2016年4月7日別刷掲載)

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