東日本大震災1年 優しさの輪復興後押し 広島の大学生 被災地ボランティア続々
12年3月13日
東日本大震災から11日で1年がたった。広島県内の大学からも、学生が相次いで被災地に赴き、がれき撤去や被災者交流のボランティアを通じて復興を後押ししている。継続的な支援のためには、大学間の連携など活動をサポートする体制づくりが欠かせない。(野田華奈子)
広島大の東広島キャンパス(東広島市)。学生有志でつくるボランティア組織「OPERATIONつながり」の4人が6日、仮設住宅の部屋につるす折り紙の飾りを試作した。9日から、総勢約20人で仙台市などを訪問。仮設住宅の高齢者や子どもを招いた交流会で一緒に作っている。
昨年9月が最初の現地訪問で、4度目の出発となる。輪が広がり、20人だったメンバーは70人に増えた。
1年吉永美穂さん(19)にとって、被災地での支援活動は今回で3度目。復興という理想と目の前の現実は大きく隔たっていた。
寝たきりの妻を置いての避難を悔やむ高齢男性、絶望感に打ちひしがれていたワカメの漁業者、撤去が追い付かない膨大な量のがれき…。「自分は本当に役立っているのか」。無力感にさいなまれた。
そんな中、宮城県岩沼市の社会福祉協議会で働く女性に「励ましの言葉をかけてもらえるだけでありがたい」と感謝された。涙がこぼれた。「1人では小さいが、みんなで積み重ねれば大きな力になる」と信じる。
広島経済大(広島市安佐南区)では11月末、学生有志15人が「東北支援プロジェクト」を結成。2月中旬、福島県いわき市の保育園と宮城県気仙沼市を訪れた。
保育園では放射線の影響を考慮し、園庭で子どもを遊ばせる時間を短縮していた。「屋内で過ごす時間を有意義に」と、学生が絵本の読み聞かせや紙芝居で交流した。「物は来るけど、人間はなかなか来ない」。メンバーの心に響いたのは園長の言葉だ。気仙沼市大島でも、カキいかだ再生に人的支援を求める声があったという。
現場での体験を踏まえて学生からは、さまざまな課題が挙がる。同大3年の加戸宏弥さん(20)は「もっと人が必要だ」と指摘。「他大学とボランティア情報を共有する仕組みをつくれば、もっと効率的に動けるのでは」と提案する。吉永さんも、他団体とボランティア活動の日程が重なった経験から、現地での活動や被災者ニーズの調整が必要と強調する。
被災地ではなお震災の衝撃や生活不安を消化しきれない人たちも多い。8月下旬、宮城県石巻市の石巻赤十字病院で高齢被災者の思いに耳を傾けた、日本赤十字広島看護大(廿日市市)4年の土井亜希子さん(22)。「傾聴」による長期的な支援を訴える。4月からは看護師になる。「患者に寄り添い、心を癒やしたい」と誓う。
一方で、大学間連携の動きも出始めた。広島県社会福祉協議会は5月ごろをめどに、大学の各ボランティア組織が情報交換する場づくりを検討中だ。学生の「役立ちたい」という熱意を、地域支援や災害のボランティアでスムーズに発揮できるよう態勢を整える。
阪神大震災の被災地で避難所での支援活動について聞き取り調査をした、広島大大学院総合科学研究科の浦光博教授(社会心理学)は「複数のグループが交流し、自分たちの活動を客観視することで、人や社会とのより良い連携が見えてくる」と助言。その上で、各大学には、ボランティアをどう配置するかなど全体を見通した支援が必要だと説く。一方、善意に頼りすぎる社会の風潮には警鐘を鳴らしている。
(2012年3月12日朝刊掲載)
広島大の東広島キャンパス(東広島市)。学生有志でつくるボランティア組織「OPERATIONつながり」の4人が6日、仮設住宅の部屋につるす折り紙の飾りを試作した。9日から、総勢約20人で仙台市などを訪問。仮設住宅の高齢者や子どもを招いた交流会で一緒に作っている。
昨年9月が最初の現地訪問で、4度目の出発となる。輪が広がり、20人だったメンバーは70人に増えた。
1年吉永美穂さん(19)にとって、被災地での支援活動は今回で3度目。復興という理想と目の前の現実は大きく隔たっていた。
寝たきりの妻を置いての避難を悔やむ高齢男性、絶望感に打ちひしがれていたワカメの漁業者、撤去が追い付かない膨大な量のがれき…。「自分は本当に役立っているのか」。無力感にさいなまれた。
そんな中、宮城県岩沼市の社会福祉協議会で働く女性に「励ましの言葉をかけてもらえるだけでありがたい」と感謝された。涙がこぼれた。「1人では小さいが、みんなで積み重ねれば大きな力になる」と信じる。
広島経済大(広島市安佐南区)では11月末、学生有志15人が「東北支援プロジェクト」を結成。2月中旬、福島県いわき市の保育園と宮城県気仙沼市を訪れた。
保育園では放射線の影響を考慮し、園庭で子どもを遊ばせる時間を短縮していた。「屋内で過ごす時間を有意義に」と、学生が絵本の読み聞かせや紙芝居で交流した。「物は来るけど、人間はなかなか来ない」。メンバーの心に響いたのは園長の言葉だ。気仙沼市大島でも、カキいかだ再生に人的支援を求める声があったという。
現場での体験を踏まえて学生からは、さまざまな課題が挙がる。同大3年の加戸宏弥さん(20)は「もっと人が必要だ」と指摘。「他大学とボランティア情報を共有する仕組みをつくれば、もっと効率的に動けるのでは」と提案する。吉永さんも、他団体とボランティア活動の日程が重なった経験から、現地での活動や被災者ニーズの調整が必要と強調する。
被災地ではなお震災の衝撃や生活不安を消化しきれない人たちも多い。8月下旬、宮城県石巻市の石巻赤十字病院で高齢被災者の思いに耳を傾けた、日本赤十字広島看護大(廿日市市)4年の土井亜希子さん(22)。「傾聴」による長期的な支援を訴える。4月からは看護師になる。「患者に寄り添い、心を癒やしたい」と誓う。
一方で、大学間連携の動きも出始めた。広島県社会福祉協議会は5月ごろをめどに、大学の各ボランティア組織が情報交換する場づくりを検討中だ。学生の「役立ちたい」という熱意を、地域支援や災害のボランティアでスムーズに発揮できるよう態勢を整える。
阪神大震災の被災地で避難所での支援活動について聞き取り調査をした、広島大大学院総合科学研究科の浦光博教授(社会心理学)は「複数のグループが交流し、自分たちの活動を客観視することで、人や社会とのより良い連携が見えてくる」と助言。その上で、各大学には、ボランティアをどう配置するかなど全体を見通した支援が必要だと説く。一方、善意に頼りすぎる社会の風潮には警鐘を鳴らしている。
(2012年3月12日朝刊掲載)