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社説・コラム

【解説】 外相会合の広島宣言 核保有国と溝物語る 「非人道性」訴え不可避

 外相会合で発表する広島宣言に「核兵器使用による非人道的結末」の文言が盛り込まれない方向になった。日本政府がこれまで使っていた文言がそのまま採用されない現実こそが、現在の核保有国と非核保有国との間で深まる対立を端的に物語る。

 昨年12月の国連総会本会議で賛成多数で採択された核兵器廃絶決議。日本が主導し、22年連続で採択された決議は、この文言を入れて核兵器の非人道性を強調した。

 しかし、一昨年の決議案に賛成した米国、英国、フランスは棄権。非人道性を旗印に、核兵器の法的禁止を目指すオーストリアなど非核保有国の動きに懸念を強めていたためだ。今回も非人道性の文言に「アレルギー反応を示す国もある」(外務省幹部)ため、外す方向で調整された。

 この外相会合で、原爆を投下した米国をはじめ、各国外相が広島に集う意義は大きい。岸田文雄外相が強調するように、停滞する核軍縮・不拡散を「再起動」させる役割を担う可能性はある。さらに広島宣言に盛り込まれる予定の「指導者の被爆地訪問」は、オバマ米大統領の広島訪問への地ならしにもなり得る。

 ただ、被爆地から発信する広島宣言に核兵器保有国への配慮が目立つならば、国際社会へのインパクトは失われかねない。核兵器の非人道性を訴えることは避けてはならない。(田中美千子)

(2016年4月9日朝刊掲載)

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