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[広島外相会合] 怒りの先 核廃絶を願う 証言活動続ける被爆者 「非道さ その目で確認を」

 「核兵器なき世界」へ意味ある被爆地訪問に―。核兵器保有国の米英仏を含む7カ国と欧州連合(EU)の外交責任者が広島市に一堂に集う外相会合。開幕を控えた9日、各国外相が訪れる平和記念公園(中区)一帯で、被爆者たちは一日も早い廃絶を願い、証言活動や署名集めに励んだ。(水川恭輔)

 「国際政治を動かせるケリー米国務長官らが公園を訪れる。核兵器、戦争のない世界をつくってほしい」。園内にある国立広島原爆死没者追悼平和祈念館。被爆者の寺本貴司さん(81)=廿日市市=は、静かに証言を締めくくった。通訳を介して聞いた米国人観光客たちは深くうなずいた。

 国民学校5年だったあの日、爆心地から約1キロの広瀬北町(現中区)の自宅で被爆。一緒にいた母親は9日後に亡くなった。原爆の悲惨さを伝える一助になりたいと、2000年ごろから証言活動を開始。08年には米国の4州6都市の原爆展で体験を話した。

 広島市民の頭上に原爆を投下した米国。「家族、友達を殺され、米国への怒り、憎しみは当然あった」。この日も胸中をそう語り、続けた。「でも、子や孫の世代に繰り返さないため、悲惨な記憶と平和の願いを共有したい気持ちが勝る」

 「核兵器廃絶へ、署名に協力を」。広島県被団協の佐久間邦彦理事長(71)=西区=は9日、被団協のメンバーたちと原爆ドーム近くの元安橋に立ち、核兵器禁止条約の交渉と締結を求める署名を集めた。

 松井一実市長が会長を務める平和首長会議も重視する禁止条約。だが2月にあった、法的措置も含む核軍縮の在り方を議論する国連作業部会の初会合に、米英仏を含む保有国は参加しなかった。「外相は広島で核兵器がいかに非人道的かを自分の目で確かめ、禁止条約の交渉へと進んでほしい」と望んだ。

(2016年4月10日朝刊掲載)

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