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7ヵ国外相が慰霊碑献花 広島宣言「原爆で非人間的苦難」 保有国の米英仏が初 (広島外相会合)

 主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に先立ち広島市で開かれた外相会合で、出席した7カ国と欧州連合(EU)の外相が11日、平和記念公園(中区)を訪れ、原爆慰霊碑に献花した。原爆投下国の米国をはじめ、核兵器を持つ英国、フランスの現職外相が公園を訪問するのは初めて。議長の岸田文雄外相が「核兵器のない世界」への機運醸成を目指す特別文書「広島宣言」を発表し、2日間の日程を終えた。(岡田浩平、金崎由美)

 5月の伊勢志摩サミットに合わせ、核兵器なき世界を提唱したオバマ米大統領の被爆地初訪問が実現できるかが今後の焦点。広島宣言では、日本政府が訴えてきた核兵器の「非人道性」は核保有国の反対で明記しなかった。

 外相らは公園でまず、原爆資料館を報道機関に非公開で見学。外務省などによると、岸田氏が主だった資料の説明をし、残る7人は思い思いに足を止めながら展示品に見入ったという。

 見学後、園内の中央参道を歩いて進み、昨年8月5日までに亡くなった29万7684人の原爆死没者名簿が納められた慰霊碑へ。8人は横一列に並び、花輪を手向けた。岸田氏が頭を下げた隣でケリー米国務長官は目を伏せがちに黙とうをささげた。一行は予定になかった世界遺産・原爆ドームも歩いて訪ねた。被爆者の証言を聞く機会はなかった。

 広島宣言は、焦点だった核兵器の非人道性に関する記述を「広島、長崎の人々は原爆投下による極めて甚大な壊滅と非人間的な苦難という結末を経験した」と表現。政治指導者らの被爆地訪問を望むとした。

 ただ「核兵器なき世界」の進展は現実的、漸進的な手法でのみ達成できると指摘。核保有国と非保有国の対話促進を訴え、中国、ロシアを念頭に核戦力の透明性向上も求めた。

 岸田氏は会合終了後、中区で記者会見。「被爆の実相に触れる日程と広島宣言が相まって、国際社会で核兵器のない世界をつくる機運を再び盛り上げる歴史的一歩になった」と述べた。

 会合ではこのほか三つの声明文書をまとめた。議長声明では、過激派組織「イスラム国」(IS)をはじめテロ組織による暴力や残虐行為を強く非難。伊勢志摩サミットでテロに対抗する具体計画の採択を目指す方針を盛り込んだ。北朝鮮の核・ミサイル開発も強く非難し、拉致問題への対処を迫った。

 海洋安保に関する声明では、南シナ海での中国の軍事動向を念頭に「緊張を高める威嚇的、威圧的な一方的行動」と批判。国際法に基づく紛争の平和的解決を要求した。

 外相会合は10日昼に開幕。ドイツ外相は専用航空機の故障で10日夕に広島入りした。

(2016年4月12日朝刊掲載)

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