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被爆者の歩み 刻む冊子 ゆだ苑・山口県立大が編集 平和への思い 次代に継承

 山口県内の被爆者7人の歩みをまとめた冊子が完成し、編集した県原爆被爆者支援センターゆだ苑(山口市)と山口県立大(同市)は12日、被爆者や学生にお披露目した。昨年度から3年計画で進める聞き取りの最初の成果で、平和への思いを若い世代に継承していく。

 冊子はA4判、129ページ。被爆体験や学生との質疑応答の内容を載せた。原爆投下直後の惨状をはじめ、友人を白血病で亡くしたり、医師に出産を止められたりした体験などその後の苦難の生活にも触れている。

 広島で入市被爆した防府市本橋町の林三代子さん(75)は自殺を考えたことを初めて明かした。熱心な学生の姿に「原爆を生身の痛みや苦しみとして感じてもらえた」と話した。

 聞き取り後、学生が被爆者に送った手紙も収めた。「戦争に対する恐怖や心の痛みを忘れたくない」「自分に置き換えて考えた。出産を諦めるということのつらさや悔しさを想像できた」などと率直な感想をつづる。

 被爆者からのバトンを受け取り、将来は福祉の仕事に就きたいという4年浦田さや香さん(21)は「被爆者の人生に触れ、今の幸せのありがたさに気付けたのが第一歩。次は、社会福祉士が被爆者をどう支えてきたかを調べてみたい」と話した。

 50部作成。ゆだ苑で貸し出すほか、県立山口図書館、山口市立中央図書館に寄贈する。(宮野史康)

(2016年4月13日朝刊掲載)

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