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社説・コラム

新社長 中国電力(広島市中区)・清水希茂氏 自由化 付加価値を重視

社員の考え 一番に尊重

 電力小売りが全面自由化された1日に就任し、社員約800人に決意を語った。自由化を航海に例えて「暴風、荒波で厳しい航海となる。風から逃げず、堂々と、かつ注意深く航行していきたい」と力を込めた。

 家庭向けの売電に新規参入する企業に対抗するため、中国電力は割安な新料金プラン4種類を用意した。既に加入が6万件を超え「一定に評価されている。中国エリアをしっかり守り抜く」と説明する。

 ただ「相手が安いからといって安くするつもりはない」と、値下げ競争には一線を画す。売りにするのは、地場企業と提携したポイントサービス。「今後も価値を加えていきたい」。反響が大きかった広島東洋カープのような提携メニューを増やす方針だ。

 首都圏で始めた家庭向けの売電については「大々的なPRは考えていない。口コミ的に拡大したい」。中国地方の出身者を中心に売り込み、3万件の獲得を目標に掲げている。

 全面自由化に並ぶ重要課題として、島根原発2号機(松江市)の再稼働を挙げる。原子力規制委員会の審査を「5合目ぐらい」と受け止める。申請から2年が過ぎ、耐震設計の目安となる基準地震動が近く固まる公算が大きい。「審査のヤマ場となる基準地震動が確定すれば、後工程に相当道筋がつく」と見通す。

 原発の事故対応などを巡っては、西日本の大手電力3社と提携を検討している。「有事の際の安心感を皆さんに高めてほしいという思いがある。力を合わせることが必要」

 2020年4月に迫る送配電部門の分離に向け、本格的な検討を始めた。「分離がデメリットにならないよう、効率化に資する分社化を模索している」。組織の形を決める時期は「(法施行の)1年ぐらい前までに」と見込む。

 好きな言葉は「問題は解決されるためにある」。旧日本興業銀行の中山素平元頭取の言葉だ。電力会社の経営環境が大きく変わる中、「問題解決を楽しみ、新しい時代に明るく前向きに取り組む」と話す。

 経営スタンスは「黄金比」に例える。トップダウン1に対し、ボトムアップが1・6。「社員がどう考えるかが一番重要」と強調する。(河野揚)

 ≪略歴≫大阪大基礎工学部卒。74年入社。三隅発電所長、常務電源事業本部副本部長兼島根原子力本部長、副社長電源事業本部長などを経て、16年4月から現職。呉市出身。

 ≪会社概要≫本社は広島市中区小町。1951年に設立。従業員は2015年3月末時点で9648人。15年3月期の売上高は1兆2996億2400万円。

(2016年4月13日朝刊掲載)

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