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核被害 ネガ5000枚の訴え 広島の重田さん 原爆資料館に寄贈へ 小頭症患者を記録

 原爆小頭症患者の撮影を続けてきた広島市安佐北区可部3丁目、写真館経営重田雅彦さん(67)が、1965年から約10年間分のネガ約5千枚を中区の原爆資料館に寄贈する。患者10人の日常に迫ったほか、家族たちでつくる「きのこ会」の活動なども収めている。(増田咲子)

 東京の大学で写真を学んでいた重田さんは65年、小頭症患者をルポした岩波新書「この世界の片隅で」で患者の存在を知った。

 初めて向き合った患者は、1人では身の回りのこともできなかった岩国市の畠中百合子さん(66)。「生まれながら、なぜこのような目に遭わなければならないのか」と衝撃を受け、何度も自宅を訪れた。両親が営む理髪店で過ごす百合子さん、家族で囲む食卓、娘をいつも気に掛ける父母の姿を撮影した。

 畠中さんに加え、患者が子どもとブランコで遊ぶ様子や結婚式、懸命に働く姿などそれぞれの日常を捉えた。きのこ会の会合や、障害が原爆に起因すると認めるよう求めた旧厚生省への陳情(66年2月)の場面もある。

 きのこ会会長の長岡義夫さん(62)=安佐南区=は「患者の存在が世に問われ、社会的に認知されていった様子が分かる貴重な記録だ」と話している。

 重田さんは「核の被害が二度と起きてはいけないという使命感があった。患者は核廃絶を語れないが、存在そのものが大きな意味を持つ。写真を後世に役立ててほしい」と願う。

 
原爆小頭症

 妊娠初期に胎児が強い放射線を浴びると、知的・身体障害を伴って生まれる場合がある。1967年、旧厚生省が「近距離早期胎内被爆症候群」の病名で、患者の症状が被爆に起因していることを認めた。厚生労働省によると、認定患者は2011年3月末で全国に22人いる。都道府県別では広島13人(うち広島市10人)、長崎3人(うち長崎市2人)、大阪2人、山口、東京、神奈川、福岡に各1人。

(2012年3月14日朝刊掲載)

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