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福島・チェルノ 写真が語る「今」 残る住民や営み消えた街 中筋さん 広島で作品展

 原発事故のあった福島とチェルノブイリ(ウクライナ)の現状を撮り続けている写真家、中筋純さん(49)=東京都八王子市=の作品展が、広島市中区袋町の旧日本銀行広島支店で開かれている。原子力災害によって人々の営みが消え、自然にうずもれていく街の様子を伝えている。26日まで。

 約100点の大作が並ぶ。大地を踏みしめる、チェルノブイリ近くの村に住む女性。いったん都会へ避難したが、事故前と同じ暮らしを求め、汚染されていても古里に戻った。「福島の仮設住宅にも、家に帰りたいと願う人はいる。自然と共存できる社会はつくれないか」。会場を訪れた中筋さんが、作品に込めた思いを話す。

 シャッターの閉まった福島県浪江、大熊両町の商店街のパノラマ写真は、インターネットのストリートビューを思わせる。親しんだ通りを散歩したいと望む住民の視点を表現した。人けのないチェルノブイリ近郊の鉄筋アパート群、放射性廃棄物を詰めた黒い袋が立ちはだかる富岡町の仮置き場…。自然や土地の歴史を遮る「不気味な」光景も捉えた。

 もともと鉱山など産業遺構を撮っていた中筋さん。初めてチェルノブイリに行った2007年、皮肉にも人間の最高水準とされる技術によって破綻した街を見た。人間の根本を見つめ直そうと6回通った。見えにくい放射線被害を伝えるため、福島にもレンズを向ける。

 チェルノブイリの原発事故から30年、福島からは5年の節目の今年、被爆地広島を含めて全国を巡る作品展を始めた。「生活が突然奪われた事実を忘れてはいけない。核の被害を語り継いできた広島でも見つめてほしい」(山本祐司)

(2016年4月18日朝刊掲載)

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