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被爆の記憶 海外で訴え 広島の伝承者1期生平野さん 4ヵ国目 来月 ポーランドへ

 被爆者の体験や平和への思いを引き継ぐ広島市の被爆体験伝承者1期生の平野由美恵さん(69)=同市中区=が、海外での講話に力を入れている。伝承者の研修を受け始めた2012年からペルーやモンゴル、アイスランドを訪問。5月にはポーランドを訪れ、現地の大学生らに被爆の惨状を伝える考えだ。(増田咲子)

 安芸高田市に生まれ、広島市で育った。夫の転勤に伴い全国を回りながら臨床検査技師として働いてきた。夫の定年退職を機に、55歳の時に広島に戻った。国際交流に関心があり、広島では外国人に日本語を教えたり、平和記念公園を英語で案内したり…。ボランティアに取り組んできた。

 海外でヒロシマを訴えるのは、11年に米国で原爆被害の実態を伝えるネバーアゲインキャンペーン(NAC)の平和大使になったのがきっかけ。原爆について伝え核兵器廃絶を訴えた。「きのこ雲の下で何が起きたのかを知らない人が多い」と感じたという。

 翌12年、伝承者に応募し昨年4月にデビューした。原爆資料館や市内の中学校で、3人の被爆者から受け継いだ記憶や平和への思いを語っている。

 「広島を訪れる機会のない世界の人に伝えたい」。そう考えて、13年にペルー、14年にモンゴル、15年にアイスランドを友人らの仲介を受け自費で訪ねた。4カ国目となるポーランドへは5月20日に出発し、クラクフやワルシャワで大学生や一般市民向けに話す。ナチスドイツによるユダヤ人虐殺の舞台となったアウシュビッツ強制収容所跡も訪れる。

 平野さんは「人種差別によりユダヤ人が虐殺され、広島では罪のない市民が亡くなった。戦争がいかに人権を無視しているか、訴えたい」と話している。

(2016年4月18日朝刊掲載)

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