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社説・コラム

社説 活断層と原発 リスク再点検が必要だ

 2千を超す活断層が走る日本列島に原発が立地することも強く意識せざるを得ない。活断層が原因とみられる熊本、大分両県の地震被害で率直な不安を抱く人も少なくないだろう。それが政府や電力会社に十分伝わっていないのではないか。

 新規制基準をクリアし、全国で唯一稼働する鹿児島県の九州電力川内(せんだい)原発も直接の被害はなかったとはいえ、予防的に停止すべきだとの声もある。

 しかし、九電は早々に安全は確認できたと動かし続けた。それでも地震の影響を懸念する国民の声を無視できなかったのだろう。きのう原子力規制委員会の臨時会合が開かれた。国の情報発信が不十分だった点は「率直に反省しないといけない」と認めつつ、肝心の運転継続の是非については「安全上の問題はない」として追認した。

 規制委の田中俊一委員長は会見で「安全上の理由があれば止めなければならないが、今の状況で問題があるとは判断していない」と述べたが、あまりに漠然としている。これで住民の不安を拭いきれるだろうか。

 確かに震源域と川内原発のある薩摩川内市は距離があって、震度は4にとどまった。揺れの勢いも、耐震設計のもとになる基準地震動よりはるかに小さかった。とはいえ今回、震源域は広がる傾向にあり、これから原発の近くでもっと強い揺れが発生しないとも限らない。

 油断が何より恐ろしい。現に今回の地震との関係が指摘される布田川(ふたがわ)断層帯と日奈久断層帯は、政府の地震調査委員会が警戒を促してきた主要活断層に数えられていた。しかし被害が大きかった熊本県益城町(ましきまち)が4年前に作ったハザードマップでは、「今後30年以内の地震発生確率は極めて低い」として想定震度も若干低く見積もっていた。

 活断層には地表に痕跡が現れにくかったり、長い年月で痕跡が消えたりしたものもあるという。今後、心配されるのはさらに別の活断層が動き、大きな地震を引き起こす可能性である。

 九州以外にとってもひとごとではない。今夏の再稼働を予定している愛媛県の四国電力伊方原発の付近には、四国から近畿まで延びる中央構造線断層帯がある。熊本などの地震が中央構造線に影響するかどうかは研究者の間でも意見が分かれる。

 しかし地元からすれば、リスクを大きめに想定するのは当然ではないか。少なくとも活断層の現状と耐震設計の妥当性を再点検し、住民にもあらためて説明を尽くすべきであろう。

 今回もう一つ浮き彫りになったのは、いざというときの情報提供がおろそかにされがちな現状である。九電にしても運転継続に対する住民の疑問にどこまで応えようとしていたか。さらに原子力規制庁がホームページでトラブルなしを伝えたのも最初の地震から半日以上たってからだ。あまりにも遅すぎる。

 規制庁によると原発の立地自治体で震度5弱以上を観測した場合は一般向けに情報発信するよう内規で定めており、対象外とみなして当初は対応しなかったようだ。今後を改善する方向というが、住民の意識とのギャップが3・11以降も何ら変わっていないと考えたくもなる。

 地震国日本の防災・減災では原発のリスクも切り離せないことを肝に銘じてもらいたい。

(2016年4月19日朝刊掲載)

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