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震災がれき 市町 受け入れに慎重 処理能力に限度の声 防府市に意見72件

 全国的に取り組みが注目されている東日本大震災で発生したがれきの処理について、県内では14日、各自治体が対応を模索する動きが始まった。防府市の松浦正人市長は13日、条件付きで受け入れる意向を表明したが、他の市町への広がりは鈍い情勢となっている。

 二井関成知事は取材に「最終的には市長、町長が権限を持っており、それぞれ判断してもらわないといけない」と指摘。近く国が開く説明会で、震災がれきの広域処理ガイドラインについて詳細が示される予定であるため、市町の首長らに出席を求める意向を強調した。

 一方で「間を取り持つ意味で県として何が応援できるか考えていく」とも述べ、説明会を経て、各市町の要望や意見を聞く意向も明らかにした。

 松浦市長が13日に条件付き受け入れを表明した防府市では、市役所には賛否双方の意見が電話やメールで72件寄せられた。

 市は大半の意見について賛否を公表しなかったが、市政なんでも相談課がメールで募る「市長への提言」に寄せられた意見14件のうち、反対9件、賛成3件、質問2件だったという。柳博之生活環境部長は「賛成の人は表立って意思表示しないことも考えられる。しばらく様子をみたい」としている。

 他の各市町は現時点で受け入れに消極的な姿勢がほとんど。周南市は「市の最終処分場の余力がなく、受け入れは困難」。山口市も「地下水に放射性物質がもれないよう埋め立てるのは難しく、周辺住民の理解が得られない」と技術面の課題を挙げた。

 焼却施設の能力や処理場の容量に限度があるとした自治体は多く、「大きながれきを破砕する能力がない」(下松市)、「町処分場の能力では無理」(和木町)、「収容能力などの点から難しい」(田布施町)などの声が相次いだ。

 柳井市の井原健太郎市長は「国は明確な安全基準を示すべきだ」と注文する。「受け入れの可否について検討中」(岩国市)、「国や県から情報が示された時点で検討したい」(周防大島町の椎木巧町長)など慎重な意見も出ている。

 野田佳彦首相は13日、政府一丸でがれき処理に取り組む強い姿勢を示し、広域処理への理解を広げたい構えをみせた。環境省の集計では、岩手、宮城、福島3県で2252万8千トンのがれきが発生し、12日現在で処分済みは6・7%の150万トン余りにとどまっているのが現状だ。

<県内東部市町のがれき処理対応状況>

●岩国市
 受け入れの可否について検討中
●柳井市
 処理場の能力や容量から現時点では受け入れできない。井原健太郎市長は「国は明確な安全基準を示すべきだ。 職員派遣など復興支援はトータルで考えるべきでがれき処理ばかりに注目されるのはどうか」
●光市
 現在、庁内で具体的な議論はしていない
●下松市
 現時点では受け入れる予定はない。市内の施設では大きながれきを破砕する能力がない
●周南市
 市の最終処分場の余力がなく、受け入れは困難
●防府市
 松浦正人市長が受け入れの意向を表明
●山口市
 現時点では受け入れは困難。最終処分場で地下水に放射性物質がもれないよう埋め立てるのは難しく、周辺住民の理解が得られない
●和木町
 具体的な議論はしていないが、町処分場の能力では無理
●周防大島町
 椎木巧町長「国や県から情報が示された時点で検討したい」
●田布施町
 動きなし。町民福祉課は「ごみを広域処理している周辺自治体と協議していない。処分場のキャパシティーなどの点から難しい」
●平生町
 動きなし。町民課は「処分場の能力や町単独の施設ではない点から現時点で受け入れは考えていない。昨年の意 向調査の時と変わりない」
●上関町
 動きなし。生活環境課の担当者は「町独自の焼却場がなく、現時点で受け入れはできない」

 震災がれきの広域処理ガイドライン

 環境省が広域処理の推進に向け策定。福島県を除く岩手、宮城県のがれきが対象。管理型最終処分場に安全に埋め立てられる焼却灰や不燃物の放射性セシウム濃度を1キログラム当たり8千ベクレル以下と設定。可燃物は1キログラム当たり240~480ベクレル以下を焼却処分した上で埋め立てられるとしている

(2012年3月15日朝刊掲載)

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