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沖縄海兵隊 岩国移転を米断念 政府 山口県と市に伝達

 米国が2月に在沖縄米海兵隊の一部を岩国基地へ移転する案を日本政府に打診した問題で、外務、防衛省の両政務官が15日、山口県の二井関成知事と岩国市の福田良彦市長を訪ね、「岩国移転はない」という日米両政府の統一見解を伝えた。(金刺大五、大村隆)

 愛宕山地域開発事業跡地(岩国市)の国への売却を留保している二井知事は米側の「断念」を受け、国の説明を了承。愛宕山跡地の売却に向け、来週にも岩国市と協議に入る意向を示した。

 外務省の加藤敏幸政務官と防衛省の神風英男政務官が山口県庁で二井知事と面談。加藤政務官は「日米間の局長級協議で、政府として岩国移転を地元に要請するつもりはないと明確に伝え、米国側から『日本政府の立場は理解した』と回答があった」と説明した。

 加藤政務官は米軍再編のロードマップ(行程表)で、2014年を目標年とする米海軍厚木基地(神奈川県)から岩国基地への艦載機59機の移転を「極めて重要」と位置付けた米側の認識も紹介。「海兵隊を岩国に追加的に移転しないことを(日米間で)確認した」と明言した。

 一方、神風政務官は艦載機移転に伴い米軍の家族住宅建設を予定する愛宕山跡地を本年度中に取得したい意向をあらためて示した。

 米側が海兵隊追加移転を否定することが、跡地の売却留保を解除する条件としていた二井知事は、「(両政務官の説明で)米国も岩国移転の意思はないことが明確になった」と評価。地域振興策への協力など県市が示した4条件の照会に対し、国が満足いく回答を示せば愛宕山跡地を売却する意向を表明した。

 福田岩国市長は市役所で両政務官の説明を受け、「不安や懸念について一定の整理ができた」と述べた。

 日米両政府は再編の見直しをめぐりワシントンで8日に外務・防衛当局による局長級協議、12、13両日に審議官級協議を開催した。

 日米協議では、米側が岩国移転断念を受けて第1海兵航空団司令部の沖縄への駐留継続を提案。これまで約1500人としていた同司令部の要員を約1300人と説明した。日本側は難色を示し結論を持ち越している。

 5月の大型連休中とされる野田佳彦首相の訪米前に、沖縄に残る部隊の構成などを盛り込んだ再編見直しの「中間報告」をまとめる方向で一致した。

 
愛宕山地域開発事業跡地

 県住宅供給公社が1998年に着工。当初は住宅団地を造る計画だったが、地価低迷などを理由に事業を中止した。2010年9月、防衛省が米軍の幹部向け低層住宅270戸や運動施設を建設する案を示し、11年10月に75ヘクタール分を約169億円で買い取る意向を表明。県と岩国市は国への売却を伝達したが、今年2月に在沖縄海兵隊の一部を岩国へ移転する案が急浮上したため、売却を留保する方針に転じた。

(2012年3月16日朝刊掲載)

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