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震災がれき受け入れ 放射性物質 根強い不安 市町「能力に限界」 国の条件整備が鍵に

 東日本大震災で発生したがれきの受け入れに関する中国新聞の調査で、広島、山口両県内では「条件付き」も含めて6市町が前向きな姿勢を示した。受け入れに向けて被災地を視察した市もあった。ただ、放射性物質への不安と原子力行政への不信は根強い。「現時点では困難」との回答が4割強で最も多く、慎重な実態もあらためて浮かんだ。

 庄原市が「受け入れる」と答え、5市町が「条件付きで受け入れる」と回答。防府市は「国を挙げての方針が出ている。全国の自治体が協力すべきだ」と呼び掛けた。

 国による条件整備が、協力の広がりの鍵を握ることが浮き彫りになった。呉市の小村和年市長は2001年の芸予地震で全国から支援を受け、協力姿勢を示す一方で「市には放射性物質を測定する機器がない。技術や能力には限界がある」と指摘。三原市の松浦邦夫副市長は「住民の不安を拭い去る必要がある」と注文した。

 「現時点では困難」と答えた自治体の中にも協力を模索する動きがある。福山市は15日、宮城県女川町であったがれき処理の現地視察に職員2人を派遣。「安全が担保されると判断できれば受け入れを検討する」とした。

 一方で、広島県世羅町は「放射線量などについて明確な基準が示されなければ風評被害が懸念される」と訴える。14日に松井一実市長が受け入れに前向きな発言をした広島市も市幹部は「放射性物質への不安を取り除くことについて納得できる状況にはない」と強調した。

 物理的なハードルも浮かび上がる。「現時点では困難」と答えた東広島市の蔵田義雄市長は「処分場に余裕がない。新たな処分場を建設するにはお金がいるし、住民の理解も必要」と説明。広島県神石高原町も「焼却施設や大規模な埋め立て地は町内にない」、山口県平生町も「処分場に余裕がない」とした。

 広島県は「国民の理解が不十分」として、国に説明会の開催などを要望している。安芸高田市は「人口3万人の小さな市であり、県や広島市の動きをみる必要がある」と主張。三次市の増田和俊市長は「県や県内の市長とも連携して考えたい」と答えた。

<がれき処理に関する広島、山口両県の自治体の回答>

●受け入れる      庄原市
●条件付きで受け入れる 呉市、三原市、廿日市市、安芸太田町、防府市
●現時点では困難    竹原市、尾道市、府中市、三次市、大竹市、東広島市、世羅町、神石高原町、宇部市、山口市、長門市、柳井市、周南市、山陽小野田市、周防大島町、上関町、田布施町、平生町、阿武町
●分からない      福山市、安芸高田市、北広島町、大崎上島町、下松市、光市、和木町
●その他        広島県、広島市、江田島市、府中町、海田町、熊野町、坂町、山口県、下関市、萩市、岩国市、美祢市

(2012年3月16日朝刊掲載)

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