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海兵隊岩国移転 米が断念 警戒感 住民に根強く 「愛宕山」 慎重な判断求める

 在沖縄米海兵隊の岩国移転問題で、外務、防衛の両政務官が15日、県と岩国市に米側の「断念」を伝えた。移転案浮上後、わずか1カ月余り。米軍再編をめぐる日米協議に振り回された地元岩国市では「別の基地機能強化を打診してくるのではないか」と警戒する声が依然強い。(酒井亨)

 「岩国が米側に軽くみられていたのは確かだ」。再編に協力姿勢の市議でつくる「岩国基地問題に関する議員連盟」の桑原敏幸会長(63)は話す。国は「岩国移転はない」として愛宕山地域開発事業跡地の売却留保の解除を求めた。桑原会長は「今後も米側は何を要求してくるか分からない。解除については、しっかり検討を」と市に求めた。

 反対派で基地監視団体「リムピース」共同代表の田村順玄市議(66)は「米軍作戦の枠組みがどうなっているか見えないと信用できない話。いつも翻弄(ほんろう)されるのは地元のわれわれだ」と憤る。

 愛宕山跡地の米軍住宅化に反対する「愛宕山を守る会」の岡村寛世話人代表(68)は「(国を通じて)跡地を買い取ってしまうことが米側にとって必要なのだろう。そうすれば違う形で基地機能強化が進む」と懸念する。

 基地問題に詳しい同市の元県議久米慶典さん(56)は「岩国は今後、対中国など米国の世界戦略に一層組み込まれる可能性がある」と指摘。「日米間の正式な合意文書が出るまで軽々に判断できない」と注視する。

 沖縄国際大経済学部(基地経済論)の前泊博盛教授(51)は移転案の迷走を「日本政府の政策決定システムができていない証左だ」とし、「米側が一度出した条件は選択肢としてずっと残る。沖縄で反対運動が盛り上がれば岩国に、ということもありうる」と指摘した。

(2012年3月16日朝刊掲載)

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