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社説・コラム

社説 志賀原発と活断層 早急に廃炉決断すべき

 原子力規制委員会が、北陸電力志賀原発(石川県志賀町)1号機の真下を通る断層について、地震を起こす恐れのある活断層であると認定した。新規制基準では、活断層の上に原子炉建屋など重要施設は設置できない。これで1号機の廃炉は避けられない見通しとなった。

 これに対し、北陸電力は「当社から説明する機会が十分にない中でとりまとめられた」と徹底抗戦の構えらしい。規制委に対して活断層であることを否定し、再稼働に必要となる適合性審査も今後、申請するという。

 直下で断層が動けば、どれだけ甚大な被害をもたらすのか。熊本、大分の両県を中心に今なお続く地震の状況を見ても明らかであろう。

 活断層のリスクを過小評価しようとする電力会社の姿勢には首をかしげざるを得ない。北陸電力は、早急に廃炉の決断をするべきだ。

 今回問題となった「S―1断層」は、かねて問題視されてきた。東日本大震災を受けて2012年7月、原子力安全・保安院は活断層の疑いがあると指摘。その後、地質調査などが実施され、今回の認定に至った。つまり、志賀原発はこの4年間、いつ起きてもおかしくない地震リスクにさらされていたことになる。

 1号機だけではない。2号機タービン建屋の直下には、別の活断層があるとの指摘がある。その上には、2号機の冷却水を取り込む重要配管が通っている。非常時の冷却システムがいかに大切か、津波による全電源喪失が起きた東京電力福島第1原発事故で私たちはよく分かったはずである。このままでいいはずがあるまい。

 問われているのは、安全確保に対する電力会社の姿勢だ。

 北陸電力の原発は志賀原発だけ。1号機は運転開始から22年、2号機は10年と比較的新しいため、廃炉になれば巨額の赤字を計上しなければならない可能性がある。電力小売り自由化で競争が激しくなる中、電力会社としては何としても廃炉を避けたいのが本音に違いない。

 しかし地震リスクが高いなら、原発を止めるのは当然のことである。福島の事故を踏まえた新規制基準で、「疑わしきは黒に」という厳しいハードルが設けられたことを忘れてはならない。

 さらに、全国で2千を超す活断層に未知の部分が多いことも憂慮される。熊本の地震では、震度7の揺れが2度あり、阿蘇や大分などへの震源域の広がりなど「想定外」が続く。鹿児島県の九州電力川内(せんだい)原発や、愛媛県の四国電力伊方原発へ影響が及ばないか、不安を抱く人は多い。電力会社には、安全を最大限に担保することが求められているのだ。

 活断層を巡っては、福井県の敦賀原発2号機でも直下に存在することが分かっている。しかし運営する日本原子力発電は、今回の北陸電力と同様、原発存続に固執したままである。

 活断層があると指摘されながら、事故につながるようなことになれば、「想定外だった」では済まされない。このままでは地域、住民、多くの株主からも理解は得られまい。電力会社は安全性に疑いのある原発に依存することは許されないことを、あらためて認識してほしい。

(2016年5月1日朝刊掲載)

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