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社説・コラム

社説 FF40年 平和の大輪咲かせよう

 ひろしまフラワーフェスティバル(FF)が40回の節目を迎える。花と平和を結び付け、原爆の廃虚から復活した広島市を象徴するイベントとして根を下ろした。あすから3日間、花をめでる安らぎの中に、平和の素晴らしさを感じ取りたい。

 会場となる広島市中区の平和大通り一帯では、花々が優しく迎えてくれる。ことしのテーマは「未来へつなぐ 花と笑顔の40年」とした。祭りとともに平和が続きますように―との願いを込めた。テロや紛争が絶えない世界に向けたメッセージとも読み取れる。

 節目を記念して祭りの中日には、公式テーマ曲「花ぐるま」をはじめ花にちなむ40曲を披露するコンサートがある。楽器の音色や歌声を合わせ、祭りの一体感はより強まるであろう。

 新たな取り組みとして、原爆慰霊碑の参道に、メッセージを寄せ書きする風船を並べる。中に入れた発光ダイオード(LED)電球が文字を浮かび上がらせ、視線の先の原爆ドームと重なり目を引くはずだ。

 FFが紡ごうとする平和は、核兵器や戦争のない世界に限らない。広い意味で当たり前の平穏な日常を指していよう。その点において、今なお混乱が続く熊本地震の被災地に思いを寄せたい。

 会場の熊本物産ブースなどでは義援金を呼び掛けるほか、市民グループも「頑張れくまもと」と記した折りづるみこしを担ぐ。東日本大震災が起きた5年前もそうだった。平和記念公園の芝生広場に花文字で「希望」「元気」と描いた。祭りは、困っているどこかの誰かに寄り添う気持ちを育ててきた。

 FFは1977年に産声を上げた。かねて国際平和都市にふさわしい祭典を求める声が地元政財界にあった。被爆から30年余りを経て、ようやく心から平和を喜び合う場が生まれた。第1回は3日間で125万人が集った。街にあふれる歓喜の大きさを物語る数字だろう。

 昨年まで計39回の人出は延べ約5900万人に上る。全国屈指の初夏の祭りになった。かつて手を引かれて訪れた子どもたちが親となり、また新たな世代へ祭りをつなぎ続けてきた。パレードに花を添えるバトントワリングチームには親子での参加もある。祭りの歴史は、家族の歩みと重なり合っている。

 8月6日の原爆犠牲者を慰霊する「静」のセレモニーとの対比で、FFは平和賛歌の「動」の祭典だと称される。こうした静と動の連動こそが、被爆70年が過ぎても色あせぬ平和希求の精神につながっていよう。

 この祭りでは、市民参加のスタイルが定着している。

 まず、会場を飾る花である。市民が持ち寄る「一鉢運動」に始まり、今では学校や企業などが苗から育てる「ピースフラワープロジェクト花育」へと結実した。ダンスや歌を楽しむ市民の発表の場でもあるパレードも充実した。14年前から「きんさいYOSAKOI」が加わり、若い世代が一層躍動する祭りへと進化している。

 40回の歴史を重ね、FFは「大輪」となった。折しも、オバマ米大統領が初めて訪れようとしている広島はどんな街だろうかと、世界中から注目されている。花に込めた被爆地の願いが共感を広げるに違いない。

(2016年5月2日朝刊掲載)

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