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家族奪われた半生つづる 住職国分さん 被爆体験記 ヒロシマの記憶 伝えたい

 16歳の時、原爆に遭い母と弟妹の計4人を奪われた、広島市中区白島九軒町、宝勝院の名誉住職、国分良徳さん(87)が半生を振り返り、「広島の歴史と被爆体験記」を出版した。

 1945年当時は旧制山陽中(現山陽高、現西区)の4年生。8月6日の朝、爆心地から約1・8キロの自宅でもある宝勝院から、学徒動員先に出掛けようとした時、「ピカッ」と閃光(せんこう)が走り、吹き飛ばされた。建物の下敷きになったものの、がれきをかき分けて何とか脱出。額の骨が陥没するけがを負った。

 家族9人のうち、母と1歳の弟は、自宅でもある寺の梁(はり)に挟まれて死亡。7歳の妹も寺で遺骨が見つかった。爆心地から約900メートルの場所へ建物疎開作業に行っていた14歳の妹は全身をやけどし、息を引き取った。

 残された家族は一時、広島を離れることも考えた。しかし寺の敷地内でサトイモが芽を出しているのを見つけ、残ることを決意したという。

 本には、被爆した仏像や境内にある被爆樹木のツバキなどの写真も収録。被爆体験だけではなく、広島や寺の歴史も記録している。

 約2年かけてまとめ、小学校高学年から読めるように工夫した。「本にして後世に残したかった。被爆から70年以上過ぎても世界では核兵器が造られ、紛争やテロなど多くの問題がある。平和について考えるきっかけにしてほしい」と話している。

 B5判、62ページ、1620円。溪水社Tel082(246)7909。(増田咲子)

(2016年5月2日朝刊掲載)

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