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原爆開発 罪と悔悟の舞 英語能「オッペンハイマー」完成 広島上演を模索

 オーストラリア・シドニー大名誉教授のアラン・マレットさん(66)と東京の武蔵野大教授リチャード・エマートさん(66)が、全編英語の新作能「オッペンハイマー」を完成させた。科学者として原爆開発の「マンハッタン計画」を主導したロバート・オッペンハイマーを題材に、人類の罪と悔悟を表現した。昨秋シドニーで初演し、被爆地広島での上演も目指す。

 舞台は広島。シテ(主役)のオッペンハイマーは、亡霊となってこの世をさまよい続けている。逃れられない苦悩をワキ(聞き手)である巡礼者に告白するうち、原爆を製造した自らの行為が、悲惨な結果を生んでしまったのだという「因果」を悟り、罪を背負う覚悟を決めて不動明王に誓う―との内容だ。

 音楽学を専門とするマレットさんは日本の雅楽や能に詳しく、現地で学生らに指導している。エマートさんは日本に40年以上暮らし、武蔵野大でアジアの演劇や邦楽を教えながら、東京を拠点に「シアター能楽」という演劇集団を率いて芸術監督を務め、外国人による能の上演にも取り組む。

 旧知の2人は30年ほど前にも英語能を共作した経験があり、人類の歴史的大事件である「ヒロシマ」をテーマに、作品の構想を温めてきたという。

 シドニーでは2日間の公演で、300人収容のホールが連日ほぼ満席だった。マレットさんは「客席はよく見えなかったが、多くの人のすすり泣く声が聞こえた」と手応えを語る。

 誰に責任があるかをあげつらうのではなく、自らの行動の結果を考えるよう促す作品。2人は「平和で意味のある世界を創造することが人間の役割であると伝えたい」と口をそろえ、広島での上演に向けた協力者を求めている。(森田裕美)

(2016年5月7日朝刊掲載)

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