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社説・コラム

社説 朝鮮労働党大会 国際的孤立から脱却を

 北朝鮮の国家方針を定める第7回朝鮮労働党大会が平壌で始まった。金日成(キム・イルソン)主席時代の1980年にあった前回から36年ぶりとなる。権力継承から4年余り、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の個人独裁体制を強化し、内外に誇示する狙いがあろう。

 ただ約120カ国の代表団が出席した前回とは様相が一変している。国際社会での孤立を反映し、主要な外国代表団の参加は確認されていない。海外メディアはおろか国内にも情報が公開されない異常な事態であり、これで国際的な信頼を得られるはずもない。

 党大会は党の最高指導機関に当たり、指導部の人事や党の路線、政策などを決める。第1回が46年に開かれ、直近の80年まで6回開催してきた。前回は後に総書記となる先代の金正日(キム・ジョンイル)氏が世襲の後継者として登場する公式の場となった。

 しかし後継の金正日体制下では一度も開かれなかった。91年のソ連崩壊で最大の後ろ盾を失って経済環境は悪化し、さらに深刻な飢饉(ききん)に見舞われるなどしたのが影響したとみていい。今回は本格的な「金正恩時代」の幕開けを宣言する舞台として位置づけているのは間違いない。

 権力の座に就いて4年間、金第1書記は軍や党、政府の幹部らを次々に更迭、粛清して権力基盤の強化を図ってきた。「先軍(軍優先)政治」を掲げて核実験を強行した父親に倣い、国際社会の反発を意に介さず核兵器とミサイルの開発にも突き進んできた。今回の党大会には、祖父が築き上げた党機能の正常化を印象づける意味合いも強いとみられるが、実質的には自らの手法の追認にすぎまい。

 その意味でも注目されるのが金第1書記が最優先課題として掲げてきた「並進路線」を、どのような言葉で言い表すかだ。核開発と経済発展を両立させるという虫のいい方針である。

 この4年、経済は比較的安定した状態と強調している。「人民生活を向上させる」と唱え、一部で市場経済を導入して工業や農業分野などで変革を進めてきたという。ただ必ずしも額面通りには受け取れまい。

 一方の核開発ではことし1月に4回目の核実験に踏み切り、それ以降も完成すれば核兵器搭載も可能な弾道ミサイルを相次いで発射した。金第1書記の権威付けに利用している節もあるが、失敗も重なってむしろ技術力の不備も透ける。

 そうした状況だからこそ、この党大会では内部結束を強めたいのだろう。

 国際社会に背を向けた代償は大きいと気付くべきだ。国連安全保障理事会や日米韓、そして中国もかつてなく経済制裁を強化している。北朝鮮の主な輸出品である石炭や鉄鉱石の輸出が制限され、南北の経済協力事業もストップしたままだ。

 かたくなに核とミサイルの開発を続ける限り、北朝鮮はさらに厳しい制裁と圧力を受ける。このままでは経済発展も人民の生活の向上もおぼつかないのは分かりきっているはずだ。

 なのに党大会に合わせ、核実験をまたしても強行する懸念が強まっている。北朝鮮を核保有国として受け入れる国など存在しない。対決と孤立から、平和と対話へ転換し、非核化を選択するしか国際社会に復帰する道は残されていない。

(2016年5月7日朝刊掲載)

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